平成17年に景観法が施行されると、柏市と我孫子市は景観行政団体になった。
それまでのまちづくりでは、公共的な建造物を建てる際には利用を中心に考え、建物が周囲に与える影響、特に周囲の景観形成に貢献するという考えでは造られてこなかった。そのため日本中にどんどん統一感がない住宅地、商業地、オフィス街が広がっていった。高度成長期の昭和時代のベットタウンの宅地造成で、手賀沼は汚染が全国に知れ渡り、そこへダイオキシンの問題で空気の汚染も心配された。市民が率先して環境問題に取り組むようになり、両市民とも将来住み続けられるようなまちにしたいという要望が強くなっていた。平成に入ると環境や景観に目を向けだした。手賀沼を囲む両市民は、生活道路、公園、駅舎などの公的建造物はじめ住宅街も商店街などの建物群のある場所もすべてが景観形成の対象ということに気づきだした。
我孫子市は平成6年に我孫子市景観形成基本計画、(柏市では平成4年3月に「柏市都市景観基本計画」を策定、平成13年3月には「柏市景観まちづくり条例」を制定。平成19年「柏市景観計画」)策定、さらに平成11年に我孫子市景観条例を施行し、建築物や開発計画に対する規制誘導など景観形成に向けた政策をスタートさせた。
我孫子市では市民が「景観まちづくり」に参加するための支援活動にも力を入れた。平成9年から10年頃にかけては、全市域を対象に、景観行政を進めるためのカルテづくりに着手。12年には、景観づくりの担い手を養成する市民講座を開催し、終了後は講座の受講生によって景観づくり市民団体「我孫子の景観を育てる会」も結成された。
平成15年度からは、我孫子市では東京理科大学の教授の協力を得て、我孫子駅南口から手賀沼までの公園坂通りと「ハケの道」とをルートで結んで回遊性を創り出すプロジェクトを進めた。丘陵山地の崖面を指す地形名「はけ」に由来するこの道は、かつては我孫子市域の手賀沼の水際をたどっていけた自然を満喫できる豊かに生物共生が見られる小路だ。もっとも特徴的なハケの道の景観は、手賀沼公園手前を左手に入る細い道で、そこから、柳宗悦邸「三樹荘」や嘉納治五郎別荘跡、白樺文学館、志賀直哉邸跡に通じる。反対に公園の前の大通りを右に行き、途中の細い道に入り、1qほど歩くと武者小路実篤邸跡にたどり着く。
平成27年3月、我孫子市民らでつくる「ハケの道プロジェクト会議」が同市と連携し、同市寿古墳公園下から旧村川別荘下まで約300メートルの「ハケの道」で、草木の植栽プロジェクトを実施した。癒やしを感じられる道づくりに向けて、地元小学生や高校生ら約60人が参加し、道沿いに草木の苗400株を植えた。
現在も散策路などとして活用される道だが、コンクリートの壁やブロック塀が並び、魅力が十分に生かされていないという。同会議が平成25年5月から、ハケの道の魅力アップに向けた企画を模索してきた。植栽プロジェクトは企画の第1弾。鮮やかに紅葉するオタフクナンテンやハツユキカズラなど3種の草木をハケの道に沿って丁寧に植え込んだ。 こうした機運は参加した高校生にも伝わり、「きれいに育ってほしい。これからは景色を意識しながら歩きたい」と話していた。
参照:2015年3月29日千葉日報