3月21日に閣議決定された「組織犯罪処罰法改正案」について、報道各社のスタンスが大きく割れていることに表れているように対決法案になる。もともと「共謀罪」の新設を目指して国会に提出されながら三度廃案になった法案の延長上にあるが、危険性は変わらないとの論調と、マイナスイメージを払拭して成立を図る政府の意向を肯定的に受け止めて法案成立を支持する論調が、真っ向対立している。
NHKの3月の世論調査でも、「どちらとも言えない」が2月より3ポイント増えているように、法案への理解は進んでいるとは到底言えない状況で、国会がどこまで議論を深められるか、注視していく必要がある。
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ジャーナリスト・長谷川 量一氏のレポートがこれらを扱って分かりやすい論評になっていたので、紹介しておきたい。
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報道各社間で法案の呼称さえ異なるとあって、法案の説明も、どう理解するかで違ってくるが、最低限の説明をすると、次のようになるだろう。
テロなどの組織犯罪を未然に防ぐために、犯罪の実行前の段階での処罰が可能となる法整備が必要だというのが政府の立場。これに従って「共謀罪」を新設する法案を過去3回、国会に提出したが、「処罰対象が不明確で幅広く適用されかねない」「恣意的に運用されかねない」「考えただけで罰せられる」といった批判が根強く、いずれも廃案になった。今回の組織犯罪処罰法改正案は、「共謀罪」の構成要件を厳格化して「テロ等準備罪」を新設するもの。具体的な違いは、(1)処罰対象を「組織的犯罪集団」に限定、(2)処罰できるのは重大犯罪を実行するための「準備行為」があった場合だけ、(3)対象犯罪を、当初の676から組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される277に絞り込み――の3点だと、政府は説明している。
2020年東京五輪を控え、政府は、テロ対策は喫緊の課題であり、国際組織犯罪防止条約批准のためにこの法案が必要と訴える。
まず、報道各社の法案の呼称を比べると、朝日、毎日、日経、東京が「共謀罪」と表記するのに対し、読売は「テロ準備罪法案」、産経は「テロ等準備罪」、NHKもテロップやネットの見出しでは「テロ等準備罪」を使っている。
「組織的犯罪処罰法の改正案」の前に「枕詞」のようにつける説明文も、「共謀罪」との関係をどう表現するかで、大きく異なる。
法案に批判的または慎重な4社は次の通り。
朝日=犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ
毎日=「共謀罪」の成立要件を絞り込み「テロ等準備罪」を新設する
日経=犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する
東京=犯罪に合意することを処罰対象とする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する
「テロ等準備罪」、いわゆる“共謀罪”法案が現在、行われている参議院本会議で可決・成立する見込みです。
(政治部・延増惇記者報告)
参院本会議は再開され、まもなく野党側の質疑が行われます。この法案は、与党側が提案した委員会採決を省略して成立させる「中間報告」という異例な形で進んでいます。これに野党側は「乱暴なやり方だ」として反発し、内閣不信任案などを提出したため国会が夜を徹して行われることになり、採決は15日午前7時以降にずれ込みそうです。また、加計学園の問題で文部科学省が進めている「総理の意向」などと書かれた文書の再調査結果は午後にも公表されます。野党側は「加計隠しだ」として批判を強めますが、今国会は16日に事実上の会期末を迎えます。あと2日では総理が出席する予算委員会の実現は難しく、都議選を前に安倍政権にダメージを与えようとしていた野党側にとっては肩透かしをくらった格好です。民進党のある都連幹部は、「国会を閉じられることで加計学園の問題が下火になる」などと懸念の声が上がっています。
参照:News Socra
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170330-00010001-socra-pol