米国のグアム、サイパンなど、日本人に身近なリゾート地に異変が起きている。日本からの旅行者数は1997年のサイパン(テニアン、ロタを含む)45万人、グアム111万人をピークに、2016年にはそれぞれ6.0万人、74万人まで激減した。特にグアムの約3割減に対して、サイパンは約9割減と減少は著しい。都内のホテルで、サイパン・テニアン・ロタの3島の観光政策を統括するマリアナ政府観光局が開催したイベントに旅行業関係者130人が参加した。マリアナ政府観光局日本事務所の一倉隆代表は「サイパンは、日本人に忘れられたデスティネーション(旅行先)になってしまった」となったという。
グアムの場合、2016年に日本人の旅行者数は74万人とトップだったが、韓国人の旅行者数は毎年2ケタ増が続き、54万人まで増えた。数年以内はついに日本を上回る可能性が高い。サイパンでは、2013年までは日本人がトップだったが、2014年は中国と韓国に首位を明け渡し、その差は開き続けている。日本人の観光客は激減してきたが、他方、韓国のLCC(低価格航空会社)や中国の航空会社が路線を開設し、地域全体の観光客数としては増加傾向にある。2016年のサイパンを含むマリアナ3島では53万人、グアムは153万人が訪れ、いずれも過去最高を記録した。
実際、グアムでホテルを運営する、ケン不動産リースの長嶋央典営業本部長は「日本と韓国人の観光客、米国軍人をうまく取り込み、2009〜2010年以降、ホテルビジネスは右肩上がりの成長が続いている」と話す。同社は日本の不動産賃貸会社ケン・コーポレーションのグループ会社。グアムでニッコーやハイアットリージェンシー、ヒルトンブランドなど有名ブランドのホテル5軒を所有・運営し、現地でのシェアは3割強と最大手だ。事業が好調なことから、同社は100億円以上の資金を投じ、340室のホテルを建設中だ。ブランド名は未定だが、結婚式場やレストランを備えた高級ホテルを2019年までにオープンさせる計画を立てる。
「グアムは日本人に愛されてきた観光地。現地の魅力が薄れたのではなく、航空会社が要因。投資している人間としては悔しい思いをしており、日本人には戻ってきて欲しい」と、長嶋営業本部長は語る。JTBのある幹部は「ツアーで3万〜5万円の価格で安売りしすぎた。航空会社の取り分が少なく、結果、便数を減らす事にまでなった」と話す。出張需要が安定的に見込めるエリアと違い、リゾート路線は需要の変動が激しい。実際にJAL(日本航空)やデルタ航空、ユナイテッド航空が直行便を多く飛ばしていたが、2000年以降に徐々に路線を削減。例えばJALは、2005年にサイパン路線から撤退。グアム路線も、中部国際空港や関西国際空港から撤退している。現在、成田ーグアム路線はJALの1日1便に加えてデルタが1〜2便、ユナイテッドが3〜4便を運行。成田ーサイパンに至ってはデルタの1日1便だけだ。その事がツアー価格の上昇を呼んだ。現在、大手旅行会社のサイパンやグアム行きパッケージツアーを見ると、販売価格は6万〜7万円ほど。「10年ほど前には、旅行会社の目玉商品として、2万9800円で販売していた。安近短の印象が強烈に残っており、(6万〜7万という)価格の訴求が難しい」(旅行業界関係者)。
安売り合戦の果てに、航空会社が路線を撤退・縮小、ツアーの値段が上がりで広告媒体への露出が減ったことで、日本からの旅行者数が減り続ける…。日本人旅行客にとってグアム、サイパンはこうした“負の循環”に陥っている。
対照的なのがハワイだ。同じく1997年の221万人をピークに、リーマンショック後の2008年には117万人まで減少。現在は約150万人程度の水準にまで戻してきた。旅行業界関係者によると「ホノルルがあるオアフ島以外にも、ハワイ島のキラウエア火山など従来と異なる視点をアピールすることができたことが大きい」とPRに余念がない。最近ではハワイアン航空による羽田-コナ島への直行便の就航、2019年には全日本空輸(ANA)が大型航空機A380の投入も決まるなど、航空会社も積極的に運行便数を増やしている。
バリ島も、ピークの2002年に60万人いた日本人の訪問者はいったん18万人まで減少したが、現在は23万人とやや回復傾向にある。「競合のリゾートが増えたうえ、直行便も減っている。むしろ健闘しているほうだ」(インドネシア観光局日本事務所)。
参照:東洋経済オンライン 【つづくに追記】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170312-00162183-toyo-bus_all&p=2つづき