21日に発表された2017年の住宅地の公示地価では首都圏の郊外が軒並み値を下げた。都心から30キロ圏内にある千葉県柏市大室のニュータウンは全国で最大の下げ幅となった。約1600戸に約4500人が暮らすこの一画は前年より8・5%下落した。このニュータウンは東急不動産が1980年から1戸あたり平均4608万円で分譲を開始。平均200平方メートルの広々とした敷地で、住宅の外観は赤れんが塀で統一され、水辺の公園やテニスコートも整備された。住民の多くは都内の銀行や保険会社などに通勤する30〜40代の会社員とその家族だった。
ただ、国鉄(当時)の北柏駅から約4キロ離れ、路線バスやマイカーを使わなければならない。30代で購入した竹田徹さん(66)は「当時は若かったので、通勤は苦じゃなかった。緑に囲まれた環境の良さを重視した」と振り返る。しかし分譲から40年近く過ぎ、住民は60〜70代が中心に。団地内のスーパーは2001年に閉店した。
05年に東京と茨城県つくば市を結ぶ鉄道「つくばエクスプレス」が開業し、最寄りの柏たなか駅は約2キロ以上、同駅からバス路線はない。今では空き家が60戸近くある。自治会事務局長の村上伸二さん(69)は「このままでは過疎化してしまう」と危機感を強める。
下落率が大きい全国10地点のうち、七つを柏市や神奈川県三浦市、横須賀市など都心近郊が占めた。いずれも駅からの距離が影響したとみられる。国土交通省の担当者は「近隣の駅周辺の宅地に需要を奪われた」と話す。
■仙台 新駅まで320メートル、12.3%上昇
一方、全国最大の上げ幅となったのは仙台駅から約3キロ離れた仙台市若林区白萩町の一画で、12・3%上昇だ。昭和20年代に造成された住宅地だが、震災後の沿岸の被災地からの移転需要に加え、15年に地下鉄東西線の新駅が約320メートル先に開業し環境が一変した。
地下鉄で仙台駅まで約6分。周辺では戸建てやアパートの建設が進む。1月に夫婦と子ども2人で戸建てに引っ越してきた主婦の渡辺成実さん(36)は「車の免許を持っていないので駅近くが魅力的だった」と話す。全国の上昇率トップ10のうち、七つは東西線沿いの住宅地となった。
不動産コンサルタントの長嶋修さんは「人口減少が進む中、バブル期のように全ての土地で値上がりは期待出来ない。駅近くなど便利な地域は都市、地方問わずに人気が集まり、不便な地域との差は広がる傾向にある」と話す。
出典:朝日新聞(峯俊一平)3/22