1997年11月に北海道拓殖銀行が破綻して以来、長い低迷から抜け出せずにいる北海道。その象徴が10年前、財政破綻した夕張市だ。夕張には、横浜に住んでいた叔父一家が定年後の夢を実現と、新婚の時にいった思い出が忘れられないと移住して数年のところだった。
一方、北海道だけではなく大活躍のニトリは、1967年に「似鳥家具店」として産声をあげていた。今や国内最大手の家具小売店に成長したニトリホールディングスは、北海道企業のフロントランナーとしてひた走る。「ロマン」を追いかける似鳥会長の視線の先には、景気低迷にあえぐ北海道の再生がある。昨年は、「北海道への恩返し」と似鳥昭雄会長は企業版ふるさと納税の第1号として夕張市に5億円の寄付を表明した。地域だけに目をやるのではなく、世界を考えて行動しているところにニトリの強さがありそうだ。
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■雇用も生み出していく意識が必要
――夕張市は再生計画を見直しました。緊縮財政一辺倒でしたが、113億円の新規事業を実施します。ニトリは企業版ふるさと納税以前から、10年にわたり夕張を支援されています。夕張の現状をどう見ていますか。
「やっぱり難しいよね。札幌から1時間30分かかる陸の孤島で観光の足も便利ではない。ただ、今の若い鈴木直道市長が市政を引き継いで、やりくりしながらも順調に再建しているし、よく努力していると思う」
「夕張は山あいにあるうえ、人口に比べて広い場所に人が住んでいる。公共の水や電気など、あらゆるものの経費がかかるから、宅地を集約する施策は非常にいい。今回、我々の寄付したお金で市民の皆さんが集まれる(子育て支援などの)施設ができるのはいいことだとも思うが、本音をいうと観光など、何か人を呼ぶようなものや雇用を生み出せる何かに使ってほしいと思っていた。それが少し残念」
「国や地方が苦しんでいるのも同じだと思うけど、これまで夕張が破綻したのも箱物をつくりすぎたから。これからは、同じお金を出すなら人を将来呼ぶようなものがいいと思った。ただ市長は、今は住民の集まる場所がないので、それをつくりたいということで。今の夕張は攻めるより、現状の維持や住民の便利さを優先するということだと理解した」
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■北海道への恩返し
――企業版ふるさと納税で、ニトリの5億円は制度が始まって以来、最大規模です。なぜ寄付を決めたのですか。
「ニトリは北海道に育ててもらった。夕張の破綻は北海道の低迷の象徴。10年前、破綻のニュースを聞いて非常に驚いたし、残念だった。夕張に寄付するのは北海道への恩返しの1つかと思った。明るいニュースを届けるには早いほうがいいと、第1号になることを決めた」
――企業版ふるさと納税の普及が進んでいません。どう感じていますか。
「地方自治体に企業が寄付できる仕組みはいいね。何より、広く浅く寄付するよりも、(ある地域に)集中して寄付できるのがいい。この10年、総額で100億円ほど寄付している。北海道中心ですが、東日本大震災では30億円ほど寄付した。熊本の地震でも、お金より毛布や寝具のほうがいいと何万枚も被災地に送った。もうけている企業が利益の一部をお返しする、というのは欧米では普通だけど日本ではなかなか根付いていないよね」
――東京都職員だった鈴木市長を、就任時から支援しています。
「東京都職員として応援に来ていた若い青年が、地元の人に懇願されて立候補して市長となって、やっている、この思いに感動した。そんな若者が北海道のためにやろうとしてくれているのに、北海道にいる我々が何をしているのだろうかと。だから、彼と夕張市の応援をしたいと思うようになった」
「ニトリの企業理念は『ロマンとビジョン』。鈴木市長も夕張を再生したいというロマンがある。35歳の鈴木市長は、私たちにとっては子供みたいなもの。よく夫婦で東京や札幌で食事したり、相談にも乗ったりしている。長期ビジョンを立ててやったらいいんじゃないかとアドバイスした」
出典:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170312-00000001-nikkeisty-bus_all&p=3 【追記につづく】つづき