塚越寛 『リストラなしの「年輪経営」』光文社知恵の森文庫
伊那食品工業代表取締役会長、
伊那食品工業では、「いい会社」をつくるための10箇条を掲げています。
これは、会社が年輪を重ねるように確実で安定した成長を遂げるための原則です。
当たり前のことを当たり前に行うのは、決して簡単なことではありません。
だから、私は10箇条として明文化し、常にそれに照らし合わせて戒めとしているのです。
《「いい会社」をつくるための10箇条》
1.常にいい製品をつくる。
2.売れるからといってつくり過ぎない、売り過ぎない。
3.できるだけ定価販売を心がけ、値引きをしない。
4.お客様の立場に立ったものづくりとサービスを心がける。
5.美しい工場・店舗・庭づくりをする。
6.上品なパッケージ、センスのいい広告を行う。
7.メセナ活動とボランティア等の社会貢献を行う。
8.仕入先を大切にする。
9.経営理念を全員が理解し、企業イメージを高める。
10.以上のことを確実に実行し、継続する。
上記から分かることは、この10箇条の一つひとつは特別目新しいものではないものです。
でも、この当たり前のことをすべてきちんと続けていたら、その会社は新鮮なものになります。
実は、この10箇条は、会社をブランド化するノウハウだという事です。
ある意味ブランドとは、「信頼ある企業が、信頼ある製品をつくって、ファンを持つ」ということに他なりません。いいブランドには、いいファンがいます。
ルイ・ヴィトンの店に行って、値切る人はいないでしょう。安くしたら、価値が下がる、だからファンは高いから買う。高い商品を買って、満足できます。
また、ルイ・ヴィトンの方は、高い値段でも満足して頂けるような製品をつくっているわけです。
それが「ブランド化」の意味です。
ひるがえって世の中を見渡すと、激安、安売り王、価格破壊といった言葉が氾濫しています。
安売りだ、安売りだという商売は、本当に消費者のためになっているのでしょうか。
モノを買う消費者も、一方では商品の供給会社の従業員であるわけです。
適正価格での販売こそ、供給会社の利益を生み、その社員の購買力を高める源泉となります。
販売業者も供給業者も適正な利益を上げ、その利益が会社を大きくすることだけに使われるのではなく、社員に適正配分されれば、GDPの6割を占める国民消費が盛んになるのは当然です。
そう考えれば、国民消費を盛んにし、景気を良くするためには、適正な利益の確保とその配分が重要になってくるわけです。ブランド化を目指すことは適正な利益を確保することにつながります。
そして、企業永続の鍵にもなります。
言い換えれば、ブランド化つまり、「信頼される商品を提供して、ファンをつくる」ことが、企業経営そのものなのです。 私の代でも、その次の代でも、ブランド化の実現は不可能かも知れません。
しかし、今始めなければ、すべては始まらないと思うのです。
塚越氏は 「『いい会社』とは、単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社を取り巻くすべての人々が、日常会話の中で『あの会社は、いい会社だね』と言ってくれるような会社です。
社員はもちろんのこと、仕入先からも、売り先からも、一般の消費者の方からも、そして地域の人たちからも『いい会社だね』と言ってもらえるように心がけています」
また、塚越氏は、「会社は社員を幸せにするためにある」、「会社は永続することに価値がある」と言っている。この2つの価値観も必然的に、「いい会社」になることによって達成できる。
「いい会社」になるためには、ブランド化すること。
こうした話は「いい街」をめざす時にも参考になる指針に思います。丁度一か月前、議会報告会を開催しました。選挙の投票率も減じている状況で、議会報告会には積極的な参加の呼び掛けをと提案書をだしました(しかし、議会運営委員会、議長にも提案書をしたためたが、どうも後回しにされて、参考に付されなかった)。反省すべきは反省して、「いいね!と言われる街づくり」に前進しよう。