大統領選開票の結果、より多くの選挙人を獲得して勝利を収めたのは共和党のドナルド・トランプ氏だったが、一般投票の得票数では民主党のヒラリー・クリントン候補がやや上回っていたことが明らかになった。
9日夕方の時点で、クリントン氏の得票率は47.7%だったのに対し、トランプ氏は47.5%だった。
CNNの集計(開票率92%)によれば、クリントン氏の得票数は5975万5284票で、トランプ氏は5953万5522票だった。開票数が1億2000万票近いことを思えば約22万票は僅差と言っていい。不在者投票なども加わるため、全体の数字はこの後変動する。ただ、獲得した選挙人の数はトランプ氏が290人、クリントン氏が232人となっている。
ヒラリー・クリントン氏(69才)は、大統領選の敗北宣言をする際に「憲法に基づく民主主義」について、一言加えたえた。
「憲法に基づく民主主義は、私たちの参加を求めます。4年に1度の選挙のときだけではありません。常に参加を求めているのです。だから、できることをやりましょう。私たちが大切にしている理念や価値を前に進めていくために。私たちの経済を富裕層だけでなく、みんなのものにするために。私たちの国を、私たちの地球を守るために」
選挙戦中に、移民やイスラム教徒や女性に対する蔑視発言が目立ったトランプ氏。クリントン氏はこう語った。「この国は私たちの予想より遥かに深く分断されている」と語り、「アメリカン・ドリームは大きい。誰もが夢見て良いほど大きい。全ての人種、全ての宗教、全ての男性と女性(ここで声を大きくして強調した)、移民、LGBT、障害者。全ての人たちのものです」とも語った。
真剣な表情で、これまでの演説に比べると、やや口調が早い。
さらに、オバマ大統領夫妻や、民主党関係者、家族らへの賛辞が続く。
選挙戦では演説中も満面の笑顔を浮かべていることが多かった。それが不自然に映ることもあった。選挙後、それが素顔に近いように感じられた。クリントン陣営は、トランプ氏の女性蔑視発言などを攻撃材料として、CMなどでも散々たたいたが、「そんなことを言う男性には慣れている」「男なんてそういうもので、目くじらを立てるものでもない」という女性も少なくなかった。一部の人々にとっては、酒に酔ってくだを巻く男の与太話程度でしかなく、それに比べて、私用メール問題などを抱えるクリントンの方がよほど悪質に見えた。
敗北宣言のスピーチで、大きな拍手が送られたのは、若者を鼓舞するメッセージを送ったときだった。
「皆さんに、特に若い人たちに聞いて欲しいんです。私は、自分が信じるもののために、生涯をかけて戦ってきました。勝ったことも、負けたこともあります。辛い思いもしました」
「あなたたちも、勝つこともあれば、負けることもあるでしょう。負けることは辛い。でも、決して、信じることをやめないでください。正しいことのために戦うことは、価値のあることです。やるべき価値のあることなんです」
彼女がこの言葉を繰り返すと、会場から大きな拍手が起きた。その様子をゆっくりとうなづきながら見渡す目には、涙が光っているようにも見えた。そばに立つ夫の目にも。
少し間を置いて再び話始めたクリントン氏は、女性の社会進出を阻む「ガラスの天井」についても、若い女性たちにメッセージを送った。
「私たちは最も高い『ガラスの天井』を打ち破ることはできませんでした。でも、いつか誰かが打ち破るでしょう。そのときが、今、私たちが考えている以上に早いことを望みます」
そして、全ての少女たちに聞いて欲しい、と言葉を続けた。
「あなたは、価値がある存在で、しかも力強い。あなたの夢を実現する機会を追い求めるに値するんです。そのことを、決して疑わないで」、そう、女性たちは男性より価値がないとその母親たちが暗に教え示した、そのことにヒラリーは奮起したと話していた。それを聴いて、私も同じ感想をもった、自分に価値があると母親が娘に伝えるようになる時、勇気をもって進みだす人が増えるだおう。
結果はともかく、勝つこともあれば負けることもあるのが人生だから、この言葉も多くの人を勇気づけるはずだ。