米国のミュージシャンで作詞家のボブ・ディラン(75)が、2016年のノーベル文学賞に決まったと13日、スウェーデン・アカデミーが発表した。1960年代、公民権運動やベトナム戦反戦運動に揺れ動く米国社会を背景に、古くさい大人たちに異議を申し立て、若者たちに熱狂的に歓迎されたのが始まりだ。現在でも、「ネヴァー・エンディング・ツアー」と呼ばれる年間100公演ほどのライブ活動を中心にして活躍している。
ランボーら象徴派詩人に影響を受け、ギンズバーグらビート派詩人らとも交流したディラン氏は、歌詞などを集めた詩集も刊行。現在に至るまで精力的なライブ活動を続け、ロック界のカリスマ的な存在であり続けている。ボブ・ディラン氏のフォークシンガーとしての代表作には「時代は変る」「ライク・ア・ローリング・ストーン」、「風に吹かれて」などがある。今回の受賞は、歌詞が受賞したことによって賛否両論を巻き起こしている。
これまでにグラミー賞やアカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞し、ロックの殿堂入りも果たしている。また長年の活動により、2012年に大統領自由勲章を受章している。そのほか、2008年には「卓越した詩の力による作詞がポピュラー・ミュージックとアメリカ文化に大きな影響与えた」としてピューリッツァー賞特別賞を受賞した。
ノーベル賞候補の一人と目されているインド生まれの英国人作家、サルマン・ラシュディ氏は、「(ギリシア神話の吟遊詩人)オルペウス(Orpheus)から(パキスタンの詩人)ファイズ(Faiz)まで、歌と詩は密接な関わりを持ってきた」と、選考委員会の声明と同様の見解を示し、「ディラン氏は吟遊詩人の伝統の優れた伝承者だ」とたたえた。「ボブ・ディランという名は、ロバート・フロストのように、ノーベル賞こそ受賞しなかったが受賞に値した20世紀の偉大な詩人、ディラン・トマスにちなんでいることを」と、候補者の一人であるオーツ氏は語ったとされる.
オバマ氏が、大統領に就任して翌年のドイツでの反核スピーチによってノーベル平和賞が授与されたときに、日本国内では賛否両論だったが国外で早すぎるなどとの声は出なかった。必ずしも賞を受けなかった人が賞を受けた人ほどの価値がないのかと言えば、時の運ということもあろうか。
ノーベル賞の賞金は800万スウェーデンクローナ(約9400万円)で、授賞式は12月10日、ストックホルムで行われる。