2016年07月20日

戦後レジームを見直すとは

 2010年10月に行われた平城遷都1300年記念祝典に皇后とともに出席した際にも、「平城京に在位した光仁天皇と結ばれ、次の桓武天皇の生母となった高野新笠は、続日本紀によれば百済の武寧王を始祖とする渡来人の子孫とされています。我が国には多くの国から渡来人が移住し、我が国の文化や技術の発展に大きく貢献してきました」と述べている。

 ことさらに天皇の発言だけを強調するつもりはない。でも多くの人が世界で最も歴史と伝統がある日本古来の王家と思いこんでいる皇室ですら、実は多くの渡来した人や文化で成り立っていることだけは書いておきたい。今さらだけど今上天皇はすごい。ぶれずに意思を表明し続けている。でもマスメディアはこうしたことに触れたがらない。テレビは論外。そして平城遷都1300年記念祝典における天皇の挨拶を細かく紹介しながら、桓武天皇と武寧王の関係についての発言だけを巧妙に回避した産経新聞と読売新聞もひどい。不敬だと右も左も怒るべきだ。とにかくあくまでも一つの例として挙げた。皇室だけではない。国民一人ひとりにも、多くの民族のDNAが入り込んでいる。顔立ち一つとっても、縄文系に弥生系、琉球系にアイヌ系、蝦夷に熊襲や隼人など、とてもバラエティに富んでいる。僕の先祖などは、さしづめ南の諸島から丸太舟でやってきたポリネシア系ではないかと推察している。

 こうして今の僕たちがいる。今の文化や習俗がある。要するにハイブリッド。純血に戻れない。それを恥じる事ではない、誇りに思っていい。これが日本のアイデンティティであり、何よりも(適応を重ねてきた)ハイブリッドのほうが、逞しくて優秀である場合が多いのだから。

 自民党が憲法改正を公式に主張し始めた2004年、アーミテージ米国務副長官は、「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と発言した。裁判員制度導入の発端は、民事裁判の簡略化を求めるアメリカの大資本の要請だ。TPPは言わずもがな。そして今国会で(おそらく)成立する特定秘密保護法は、日本版NSC(国家安全保障会議)を作るために共有する情報漏洩を防ぎたいとするアメリカの要望だ。

 現在の政権を支持する人たちに訊ねたい。これで本当に戦後レジーム(アメリカの支配)からの脱却などと言えるのだろうか。僕にはむしろ、戦後レジームへの回帰にしか見えないのだけど。どこから見れば脱却になるのだろう。

出典:ダイヤモンド ONLINE 2013 11月
          森 達也
posted by Nina at 00:00| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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