2016年07月19日

天皇陛下の「生前退位」が英国でも報道される

 日本で天皇陛下の「生前退位」の可能性が報じられた13日、英メディアも速やかにこれを追った。
 英BBCとFT(英フィナンシャル・タイムズ)の報道を見てみよう。

 BBC(「日本のアキヒト天皇が『退位を望む』」)は陛下が「皇室を第2次世界大戦中の攻撃的な国粋主義と切り離したことで高い評価を受けてきた」と記す。 天皇陛下についての5つの事柄を挙げている。

 「陛下はより現代的なスタイルを採用し、皇室を国民により親しみやすいものにする努力をしている」。

 「1959年に平民とご成婚。二人の愛の物語は国民の心をとらえ、『テニスコートのロマンス』と言われている。二人がネット越しに出会ったからだ。陛下と美智子様の間には3人の子供がいる」。

 「陛下は第2次大戦の傷をいやすために努力しており、昨年、このように述べている。『ここに過去を顧み、先の大戦に対する深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民とともに、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります』」。

 2002年に韓国と共同開催したサッカー・ワールドカップの前年、恒例の記者会見で、「私自身としては、桓武天皇の生母*が百済の武寧王の子孫であると、『続日本紀』に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています。武寧王は日本との関係が深く、この時以来、日本に五経博士が代々招へいされるようになりました。また、武寧王の子、聖明王は、日本に仏教を伝えたことで知られております。」との発言を行った。(海外では話題になっていたが、2001年の発言について日本のマスコミはほとんど報じていない。) この発言を受けて当時の金大中大統領が年頭記者会見で歓迎の意を表するほどだった。なお、今上天皇は平城遷都1300年記念祝典の挨拶でも、百済とのゆかりについて同様の趣旨を発言している。
   *桓武天皇の母親の高野新笠は10代前に渡来し、6代前に日本に帰化した。
    渡来した初代・純陀太子の父が武寧王[461年日本生まれ第25代百済王(在位501-523年)]だ。

 「陛下の趣味は海洋生物学で、ハゼの研究が専門だ」。

 FTの記事(「日本の公共放送がアキヒト天皇が退位を準備」)では、「近代日本では前例がない出来事」は「2−3年後に実現するかもしれない」と報じた。そうなれば「200年で初めてになる」(前回、天皇陛下が生前退位した例として、FTは江戸時代の光格天皇を挙げている)。

 昨年、82歳の誕生日から陛下が高齢のため十分に公務を全うできなくなったと発言し始めたことを指摘した後、FTは天皇陛下の歴史に対する見方を紹介する。

 陛下は「歴史を正しく記憶することの重要性を語っている。歴史の記憶は、皇室と日本の右派修正主義者たちが対立するトピックだ」。

 FTは、「戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」という陛下の発言を紹介している(注:記事にはどの発言かが示されていないが、昨年の新年のお言葉ではないかと思われる)。

 記事は最後に、陛下のこれまでの人生の経過を記している。

 第2次大戦で英国は勝利国の1つとなり、日本は敗戦国となった。戦時中の日本軍の残虐性や捕虜の扱いについての記憶は今も英国にありありと残る。しかし、現在の天皇陛下は戦時中の天皇であった父親とは一線を画す人物という認識が広がっており、陛下に何らかの責任を問う論調はもはやない。BBCもFTも国民から愛されている人物として報道しており、これが裏付けられたと言えよう。

 生前退位の規定はなく、本人の意思によって引き継ぎは可能と言われるものの、ほとんど実例はない。ただし、1936年、国王エドワード8世が米国人女性と結婚するために在位1年弱で国王を退位した一件がある。

 エリザベス女王は4月21日に満90歳の誕生日をむかえた。6月11日が「公式誕生日」となっているため、生誕を祝うさまざまな祝賀行事が開催された。在位は64年を超え、歴代国王の最長記録を更新中だ。

 父親(ジョージ5世)が急死し、25歳で女王となったエリザベスは「英国民のために自分の生涯をささげます」と誓った。生きている間に退位するのは想定外だ。任務を途中で放棄することなど、ありえない。

 ここで当惑するのが長男のチャールズ皇太子(67歳)だ。母親が現役のため、いつ国王の座に就けるのか分からない。これまでで最も高齢で国王となったのは、1830年に即位したウィリアム4世だった。ウィリアム4世は64歳で即位したが、チャールズはこれを超えている。

 2013年、オランダで在位33年のベアトリクス女王(当時74歳)が退位を表明し、長男のウィレム・アレクサンダーが国王になった。同年、ベルギーの在位20年アルベール2世(当時79歳)も長男のフィリップに国王の座を譲った。スペインでもファン・カルロス1世が退位した。いずれも高齢化が背景にあった。そして、2016年、日本の天皇陛下が生前退位を希望しているという報道が伝わってきた。

 それでも、6月の90歳の誕生祝賀行事での国民の熱狂度を見ていると、エリザベス女王の生前退位の可能性は現時点では低いと言わざるを得ない。ただ、本来なら女王がやるべきさまざまな公務をチャールズ皇太子や孫にあたるウィリアム王子夫妻(ケンブリッジ侯爵夫妻)やヘンリー王子(ウィリアム王子の弟)が代わりにやるようになっている。


出典:ニューズウィーク日本版 7月14日
小林恭子(在英ジャーナリスト)
posted by Nina at 00:00| 千葉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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