2016年07月10日

真夏の世の悪夢の検証

 本日は、参院選投票日。結果は大方わかっている。
 さて、海の向こうはEU離脱に関して欧米経済の変革が見られるが、その一方でイラク戦争の検証が厳しく進んでいる。だから、このレポートの報告をうけて、時の日本政府の判断はいかがなものだったか、追従するだけで尻拭いは無しのツブテでいいものか、聞いてみたい、否、国民は憲法改正をにらんで聞くべきだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2003年3月、ジョージ・W・ブッシュ元米大統領とトニー・ブレア元英首相(労働党)が主導したイラク戦争の是非を検証してきた独立調査委員会(ジョン・チルコット委員長)が6日、「武装解除の外交手段が尽きる前に英国はイラク侵攻を選択した」「その時点で軍事行動は最後の手段ではなかった」とするイラク戦争検証報告書(通称チルコット報告書)を発表した。イラクだけでなく、英国が軍事介入したアフガニスタン、シリア、リビアでもイスラム過激派による混乱が広がっており、遅すぎた審判と言えるだろう。

 英国では先月23日の欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票で過半数が離脱を選択したばかり。残留に投票した人の多くが事業の見直しや雇用や投資の計画変更を迫られている。離脱派は十分な説明をしないまま移民の大量流入を招いたブレアやゴードン・ブラウン前首相のEU政策に憤っている。今回の報告書で、イラク戦争を主導した政治支配層への不信感が一層強まるのは必至だ。

「イラク政策は間違ったインテリジェンス評価に基づいて立てられた。この評価に対する議論が行われるべきだったが、実際には行われなかった」「英国の軍事行動の法的根拠が決められた状況はとても十分なものではなかった」

「イラクに派兵される3旅団が適切な準備をする時間はほとんどなかった。これが装備不足につながった」「03年から09年の間、イラクの英軍は装甲車、偵察・情報収集、ヘリコプター支援を含む主要エリアで装備不足に直面した」


「明らかな警告にもかかわらず、イラク侵攻がもたらす結果は過小評価された。フセイン政権を倒した後の計画や準備は全面的に不適切だった」「政府が立てた目標は達成されず、紛争の結果、200人以上の英国人と、09年7月までの時点で少なくとも15万人のイラク人が亡くなり、100万人以上が避難を余儀なくされた」


聖書を上回る単語数で

 北アイルランド事務所の事務次官を務めた上級官僚ジョン・チルコット氏が委員長を務める調査委は09年11月以降、ブレア、ブラウン、当時の閣僚、外交官、情報機関幹部ら証人150人以上から聴取した。調べた文書は15万点。かかった費用は1千万ポンド(約13億円)。チルコット報告書に綴られた単語数は聖書の77万5千語をはるかに上回る260万語に達した。

 英国のイラク戦争を主導したのは「ブッシュのプードル(愛玩犬)」と揶揄されたブレア1人と言っても過言ではない。かつて調査委で証言したブレアは「01年の米中枢同時テロでイラクの大量破壊兵器疑惑をめぐるリスク評価は一変した。リスクは一切許容できない。制裁を突きつけイラクに大量破壊兵器を廃棄させる国連の封じ込め政策を支持し続けるわけにはいかなくなった」と、武装解除のためのイラク侵攻の判断を正当化した。

 この日公表されたチルコット報告書はしかし、ブレアの主張を完膚なきまでに退けた。

「後に軍事行動が必要になった可能性はある。しかし03年3月の時点でイラクのフセイン大統領(当時、06年12月に処刑)は差し迫った脅威ではなかった。しばらくの間、封じ込め戦略をとり続けることは可能だった。国連安全保障理事会は査察と監視を支持していた」

「イラクの大量破壊兵器(WMD)による脅威の深刻さを判断するため、正当化されない確実性が提示された」「インテリジェンス(情報収集)が確認したことは、フセインが科学・生物兵器を製造し続けているという疑いの域を出ていない」

明らかに間違った判断がなぜ行われたかと言えば、「ブレアが米国の対イラク政策を動かす自らの能力を過大に評価していたからだ」とチルコット報告書は結論づけている。

「02年7月、ブレアはブッシュにどんなことがあってもブッシュと行動を共にするという確約を与えていた」「ブレアは書簡で、フセイン政権を確実に倒すためには米国主導の有志連合による有効な軍事行動が求められるだろうと指摘していた」

 開戦前、ブッシュとブレアの会談に同席していたブレアの外交政策担当補佐官で元駐米英国大使(03〜07年)のデービッド・マニング氏は筆者のインタビューにこう語ったことがある。

「ブレアは地上戦を望んでおらず、国連を通じた外交的解決を求めていた。(武力行使を明示的に容認する)新たな国連安保理決議が必要だとブッシュ氏を説得し続けたが、最後は万策尽き、米国と行動をともにすることを決めた」

英米の「特別な関係」を最優先

 これに対し、チルコット報告書はブレアが国連安保理決議を得て軍事行動でフセイン政権打倒を目指していたと指摘している。しかしフランスなど他の常任理事国の反対で安保理決議が難しいと見たブッシュは有志連合によるイラク侵攻を急ぐ。そして開戦1週間前にブレアは安保理決議なしでの侵攻に同意せざるを得なくなる。

 イラク侵攻の正当性より、第二次大戦以来、「特別な関係」を保つ英米の同盟関係を最優先にするブレアの高度な政治判断があった。後に中東・北アフリカを混乱に陥れるこの判断はブレア1人で行われた。ブレアは報告書の発表を受けた記者会見で、「すべてに同意できるわけではないが、チルコット報告書の批判にはすべての責任を負う」と自らの非を認めた。

チルコット報告書は密室での政治判断がいかに危険かを教えてくれる。コソボ、シエラレオネ、アフガン、イラクとブレアの人道的介入は順調に行くかに見えた。が、アフガン、イラクではイスラム原理主義勢力タリバンや過激派組織ISが勢いを増し、キャメロン現政権が介入したリビア、シリアでも治安情勢は悪化している.

出典:NEWSWEEK 7月7日

木村正人
在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002〜03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。

posted by Nina at 00:00| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
カテゴリ
日記(3497)
ニオュ(0)
歴史(0)
chiba(60)