先週行われた欧州連合(EU)離脱の是非をめぐる英国民投票の結果は、世代間の意識の差を浮き彫りにするものでもあった。
全体としては52%対48%という大接戦の末に離脱派が勝利したが、投票先の世代別調査では、年齢が低いほどEU残留を望み、高くなるほど離脱を支持する傾向が強く、結局は若者が高齢者に敗れた形となった。
この結果は参院選中の日本人の目にどう映っただろうか。
■18〜24歳は75%が「残留」票を投じた
国民投票当日の2016年6月23日、保守党のアシュクロフト元上院議員が実施した調査(約1万2400人が回答)では、18〜24歳のうち73%、25〜34歳のうち62%が「残留」を支持していた。
だが、「残留」優勢の流れは45〜54歳で逆転。55〜64歳では57%、65歳以上では60%が「離脱」票を投じ、年齢が上がるほど離脱派が増える結果となった。
世論調査会社「ユーガブ」が行った調査でも18〜24歳の75%が残留に投票していた。一方、65歳以上の残留票は39%にとどまった。
両調査結果は、いずれも「世代間の分断」を鮮明に示している。なぜここまで世代により差が出たのか――。背景の1つには、育った環境の違いがありそうだ。
EUが発足したのは1993年のこと。欧州諸共同体(EC)から考えればイギリスも1973年に加盟しているが、EU発足後の急拡大により、欧州を取り巻く環境は大きく変化した。
つまり、今の英国の若者たちは、物心ついた時からEUにいるのが当たり前だった。人、モノ、サービスが多くの国々を自由に行き来する環境の中で育ったわけだ。これは、少なからず大英帝国時代への郷愁や自負のある高齢者層とは大きく異なる部分だ。
今回の国民投票に関連する興味深い話がある。
米グーグルが24日に明らかにしたところによると、離脱派の勝利が決まった後、英国内で最も検索回数の多かったEU関連の質問は「EU離脱は何を意味する?」であり、2位は「EUって何?」だった、というのだ。ちなみに3位は「EU加盟国はどこ?」。
この話は「英国民の多くがその意味を理解しないまま、ネット検索に答えを求めた」「何も何に投票したのか本当は分かっていなかったようだ」という、やや皮肉な見解とともに注目を集めている。
だが一方で、ネット世代が若者中心と仮定するならば、若者たちが改めて、離脱することの意味を調べたということが考えられる。そして、愕然として、不満を爆発させて後の祭りとなった・・・「EU」という共同体での行き来の自由な生活に慣れ親しんで、それが不自由になるのを阻止したいのであれば、投票以前に、練り歩いてデモをするなりすべきだったという見方もできる。日本では、SEALDsがデモ行進やイベントを企画し動画サイトに送信したが、関心がある人しか結局は広がらなかった。民意を民主主義につなげる手立てを政治家が握っているのだから、無報酬で仕事や勉学の合間に活動する厳しさがある。
EU離脱の決定は、若者世代や将来世代の今後に大きく影響するものだ。ネット上では、将来のある若年層の未来が余命少ない高齢層に決められてしまったと八つ当たり、不満が爆発しているが若者の投票率が低かったという事はなかったのか。物事に律儀な高齢者に対して、若い世代は動かずに民意を問えるネット社会にいるのに、投票に間違いなく行くよう呼び掛けたり必死にしたのだろうか。もともと、議会であっても多数決が正しく効いているものではない。判断が英断とばかりは言えない結果を引き起こしてきた。
結局は、若年層の投票率が高齢者をしのぐほどではなかった――との分析もなされているが、「世代間の分断」が浮き彫りになったことは確かだ。国民投票のやり直しを求める署名は350万人を超えた。
こうした状況を見て「英EU離脱は他人事ではない」と感じた日本人も少なくなかったようだ。少子高齢化が進む日本では、有権者の年齢分布は中高年に偏っており、政策も中高年に有利なものが掲げられがちである。
7月10日の参院選では、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことにより、新たに約240万人の若い有権者が加わった。若年世代の政治的な声が反映されやすくなることが狙いだが、約240万人という数が有権者全体に占める比率は、わずか2%にすぎない。もともと若年世代は投票率が低く、若者の声がどこまで反映されるかは不明瞭だ。
ジャーナリストの江川紹子氏は25日、英国民投票の結果についてツイッターで「若者の投票率がもう少し高ければ違った結果になったかも」と述べつつ、「日本の若者も投票に行こうね」と呼びかけた。
小説家の石田衣良氏も「国民投票の恐さがあるね。日本なら憲法改正か日米安保か。参院選もちゃんと考えないと......」と、つづった。
参照:J-CASTニュース 6月27日(月)19時34分配信