被災地に善意の救援物資を送る前に「何が最適なのか」を考えてみたいとの呼びかけもされています。
何が役にたつのか・・・。ネットでは、QOLの考え方に基づき、様々なアイデアも発信されるようになっています
”簡易段ボールトイレ”の作り方
平塚女性パワーズ 提供
国連開発計画(UNDP)、セーブ・ザ・チルドレンなどを通じ中東・北アフリカで子供の支援活動に携わってきた田邑恵子さんは、経験からみて、支援活動をアドバイスする「適切な」支援とはと下記のように言われます。
今回は、輸送路が断たれて「送らないように」という呼びかけも、一部のメディアでなされていますが、「助けたい」という気持ちが一番効果的に発揮されるように、義援品(救援物資)を送る前に考えて頂きたいことをお話したいと思います。
被災者に行き渡らなかった救援物資
東日本大震災では、報道された一部の避難所に大量の物資、生もの(おにぎり、果物など)が集中し、その一方、物資配給を受けない避難所あるいは自宅退避を続けている方々には行き渡らなかったことが問題になりました。現在、これら過去の苦い経験から、避難所間のニーズ情報を共有し、必要なところに、必要な物資が、適切な優先順位にて配布されるような調整機能が、現地の自治体、国際NGOなどの間で模索されています。各避難所に収容されている人数の把握、備蓄、物資の過不足の洗い出しなどが進められています。
古着は受け付けない国際NGO
配布する調整だけで、不必要な時間とスタッフが浪費されてしまうからです。
義援品には、タイミングを逃すなどのミスマッチのリスクもつきまといます。また、大量に送付された義援品(衣料品など)が物流システムへの負担となり、優先されるべき品物(食料や医薬品)などの到着を送らせてしまうリスクも伴います。
緊急支援において物資の購入をする場合、各団体では規格を合わせ、どの団体も同じ内容の物資を配布するように調整を行っています(素材や家族の人数に応じた量など)。 これは「あそこの方が、中身がいい」という不公平感を呼ばないためです。厳密な基準を設け、それに合致するもののみを受け入れることもあります。
カップラーメンはおススメしない
また、被災者の方がリクエストするものが、一番最適なチョイスではないこともあります。有名な例でいうと、カップラーメンでしょうか。寒い時に湯気のたつラーメンを食べると暖まるし、「ホッ」としますよね。
そのため、昔はカップラーメンを備蓄されていた方も多かったと思いますが、今は備蓄としておススメしない品物のひとつです。それはラーメンの容器が衝撃に弱いこと、1食分を作るのに必要な水とお湯を沸かすための燃料の消費量が多いからです。 災害発生時、初期の段階では給水車も整わず、水、燃料は大変貴重です。ラーメン1食分のために使われる水と燃料のロスが多いのです。
粉ミルクにはリスクも
これは海外の例ですが、聞き取り調査をすると保護者は「子どもに与える粉ミルクが欲しい」と訴えます。実はこれは、人道支援団体が一番避けて欲しいと思っているリクエストなのです。 衛生環境が悪く、安全な水が確保できず、哺乳瓶の消毒ができない時に粉ミルクを与えることは、実は赤ちゃんの命を危険にさらすことになります。粉ミルクを配布するよりも、お母さん達の栄養状態を改善し、精神的なストレスを取り去り、マッサージ指導をするなどして、母乳が出続けるようにする方が、安全なのです。 どうやって哺乳瓶の消毒を停電中の避難所でするのか?ということを考える余裕のないお母さんがたまたまインタビューを受け、たまたまそれがニュースで流れ、そして、数多くの粉ミルクが配布されるというのは、海外の支援現場では、本来望ましい形ではありません。 日本では、アレルギーが多いお子さんもいて、自治体が定める避難所の備蓄品目には、哺乳瓶、粉ミルク、アレルギー用粉ミルクが含まれているところが多いです。
ソーシャルメディアを見て即、行動することは控えよう
善意が現地への負担にならないようにするためには、「賢い」支援のあり方が必要とされています。「○○が△△で必要とされています」というソーシャルメディア上の書き込みを見て、即、行動することは控えましょう。 窓口、受け入れを行っている団体の公開している情報をきちんと調べ、製品の仕様(材質、サイズなど)、数などを確認してから送ることが求められます。
「困っている人のところに届けたい」という気持ちはとても重要です。でも、その善意が支援の妨げとならないためには、次のような点を調べ、検討した上で、最適な方法を選ぶことが支援したいと願う方にも求められています。
(1)自分が直接、避難所・知人に送るのが本当に効果的なのか
(2)周辺市町村にて購入・配布を行っている団体は存在するか(物品ではなく寄付にて団体をサポートする)
(3)被災された方が自分で選んで購入できる手段はないか(物流の回復は思うよりも早いもの。物資がないから直接送りたいというのは、事実ではないことの方が多い)
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田邑恵子:国際協力の仕事に従事。開発援助や復興支援の仕事に15年ほど従事し、日本のNPO事務局、国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)、セーブ・ザ・チルドレンなどで勤務。中東・北アフリカ地域で過ごした年数が多い。現在はフリーランスとして活動している。北海道大学法学部、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院卒。北海道生まれ。