我孫子市の中央学院大学において手賀沼学会大会が開催されるようになって久しい。2004年に手賀沼集水域の自然、社会を含めた文化の総体について、気楽に学ぶ目的で設立され、海津新名もレポートを提出して加わった事があった。設立にあたっては、山階鳥研の山岸哲所長(当時、現在名誉所長)が発起人として参加し、2013年には第十回記念大会が開催され、美しい手賀沼を愛する市民の連合会なども運営委員となるなど市民サイドの協力や、福嶋浩彦元我孫子市長(同学院教授、前消費者庁長官)の講演がされた。さすがに、「国民がいて、国家がある。それなのに『国家があって国民がいる』というふうに、今は逆立ちしてみている。地域から変わらなければ、国は変わらない。地域の人が考えて、実行しなくては、地域の人は幸せにならない。」と弁舌爽やか、更に住宅都市を掲げた市長であったが「人口が減るときにどう質を高めて小さくしていくかを考えていく必要がある。」との提言もされたとのことだ。
この記念開催には、堂本前知事の講演もあって、まず手賀沼で絶滅した水生植物を40年前の沼の土から復活させようという県立中央博物館の遠大な計画を紹介のあと、亀成川の水源地に残る生態系がなくなるという問題について話されたのだと記録がWebに残っている。「これだけ貴重なものが残っているものを壊すのは犯罪です。宝物にして保全していくべき」との講演の最後には、写真が草深原(そうふけっぱら)というタイトルで草原の映像が出され、なんとも関東エリアのサンクチュアリを実感させ、私たちが県民が国土を守らなくてはと、気づきの場所に暮らしている事を教える内容だったようだ。
もっとも印西市民も、亀成川の危機的状況を知らない方は大勢いる。むしろ、柏、松戸などの大都市圏の住民が、都内近郊で、ホタルやキツネが見られると関心を示していたりする。
それを示すような日本魚類学会の会長が招聘されての講演きのタイトルは「日本の宝 亀成川」だった。以来、日本トンボ学会、日本草地学会、日本生態学会からも注目され、要望書の提出やら調査やら意見書やらと、とにかく、住んでいる私たちが思っている以上に科学的にもこの地のすばらしさが、証明されてきたという。
残念ながら、我孫子市長の「外来種のコブハクチョウを好ましい生きものとしてとらえていた」(2009年)の話は現実を知らなすぎると辛口コメントが寄せられていた。基調講演は何を言いたいのかよくわからず、利根川の変遷をなぞっただけであり、収穫は何もなかったと手厳しい。「ブラックバスやブルーギル、アメリカナマズを問題視していたのに、ハクレンは何とも思っていないようで、やはり物事の本質を理解していないことがわかる。時間は半分でよかった。」「全体的に通してみた感想は、プレゼンテーションの稚拙さが目立った。高齢者が多いために、従来の講演のような形式が多く、退屈であり、このような発表は久しぶりに見た気がする。かといって話が面白いわけではない。手賀沼の明日を思うと、すこし悲しくなる学会であった。」との参加した人のブログ書き込みがあって、この学会の取り組みも見直されているのかもしれない・・・。
(と、思って聞いたところ、11年目を迎えて、学会は終了したということが分かった)