考えてみると、今や我孫子の手賀沼というよりは、柏の手賀沼の方が多くの人が立ち寄る賑わいがあるとも言えるかもしれない。一年中にぎわう道の駅、夜まで営業の温泉、いつでもおいでのいちご狩り、秋には梨狩り、日中のボートの船着き場付近からハスの花咲く水上遊覧船もある。そして、実は千葉氏の歴史も我孫子側よりは旧沼南町の側に多く残っているのだと当地の郷土史家の方が教えてくださった。そういわれてみれば、ロシア正教会も開かれていたのだから、町としての歴史は柏エリアに軍配があがるのを私たちは知らないままでいたのかもしれない。そこで、手賀沼とキーワードをいれて検索してみたら、柏市役所の手賀沼について簡潔に書いたページが検索された。
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/280400/p007311.html
そのページの下敷きになったのは、中村勝氏(旧沼南、柏市史編纂委員副委員長)の文章で、今年3月に『手賀沼開発の虚実』を刊行された方だ。中村氏は美術館の運営をされながら、蕎麦も打つという趣味を超えて、美術館内のカフェで提供してくださる。奥様のとれたれ山菜が天ぷらになるのだから歴史ファンがやってくることが多い。
しかも、運営する私設美術館は早逝した画家であったご子息の遺作を展示するために開設したものだ。この場所は、ギャラリー展示をされる様々な作家の拠り所、歴史好きの人々の語らいの場にもなって、ほっこりとなってくる。お薦めの手賀沼の隠れた秀逸な散策スポットだ。
中村順二美術館の正面と前庭
更に、旧沼南に行ってみた際には、是非とも見ておきたいのが芹沢コレクション。
染色工芸家で人間国宝となった世界的に愛好された芹沢_介(1895年〜1984年)の作品が、その芸術性に惹かれ、篤志家として知られる砂川七郎氏によって生涯にわたって蒐集に情熱を注いだ作品が集められている。氏は自らの所蔵作品を一般に公開するため、昭和56年5月、自宅に「砂川美術工芸館」を設立。ここにしかない逸品が揃い、芹沢ファンをはじめ、多くの工芸愛好家の関心を今も集めた。砂川館長の健康上の理由により閉館となったが、「作品を持っているだけではしょうがない。集めた作品を散逸させないよう後世に伝え、柏市の文化振興に役立てたい。」と、コレクションは平成7年5月、コレクションを柏市に寄贈した。旧沼南庁舎内の「柏市郷土資料展示室」で引き続き展示(無料)が見られることになった。
また、コレクションが展示される旧沼南庁舎の建物の脇は、地域の発展に努力されたかつての町長らの顕彰碑、鮮魚(なま)街道の橋梁部分などが置かれて感慨深い。


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