箱根山の火山性地震が大幅に増えているとの報道は不安だが、一方、ネパール大地震は発生から二週間を迎え、各地からの救援活動が現地の人々の支えになっている。
ネパールは裕福な国ではなく、政権も変わって日が浅く、その上インフラも整っていない。半日の停電が当たり前で、不便な生活には慣れているという。豊かさを示す国連の指数で、ネパールは187カ国中145位(2014年版)だ。食糧事情の悪化が懸念されているが、目立った暴動は起きていない。無人の商店街では略奪も見られず、テント暮らしの被災者は比較的穏やかに過ごす。東日本大震災でも略奪などはほとんどなく、海外から称賛された。ネパール在住の日本人らは「こちらにも助け合いの精神がある」と両国の類似性を語った。
首都カトマンズ最大規模の避難所となったラトナ公園では約2500人がテントで暮らし、毎日、ネパール軍による配給がある。配給のたびに1千人以上の列ができるが、整然と一列に並び、割り込む人もいなければ、支援物資を奪い合うこともない。
テントで暮らす4人家族のダルマラール・サキアさん(44)は「ここに来れば皆さんが助けてくれる。大変ありがたいことだ。皆で分け合えば、なるようになるし、騒いでも仕方がない」と話す。
ネパールに14年間在住する酒卸会社経営、高田英明さん(48)は「持てる者が持てない者に与える助け合いの精神があり、物を奪ったりした人は強く非難され、その社会で生きていけなくなる。輪廻転生の宗教的精神もあり、起こったことに対し悔やむのではなく、あっさりと納得するという気質がある」と説明する。
同国在住約20年の日本語教師、坂本みどりさん(64)も「政府の支援に頼るのではなく自ら何とかしようという気概がある」と強調。カトマンズで医療支援活動に携わる陸上自衛隊の佐藤裕己・2等陸曹(34)は、東日本大震災でも震災直後から約2カ月、被災者の巡回診療をした経験がある。佐藤氏は「被災されたネパール人は、日本人の被災者と同じように結構、表情が明るくて気持ちのよい対応をされる。こちらが逆に元気を分けてもらっている」と話す。
06年のジャワ島中部地震で被災後に略奪や暴力行為が発生するなど、今回のネパール地震と同様レベルの災害では過去、略奪や暴動がニュースになってきた。
ただ、在ネパール日本人会の水橋雄太郎会長(54)=JICA専門員=は「今は無事を親族たちと喜び合うことの方が大事。長期的には、家を失った人や仕事がなくなった人を助けていく必要がある」と継続的な支援の必要性を訴えた。
ローソンなどコンビニでも、募金箱が置かれている。東日本大震災のおりには緊急物資としてネパールからは毛布が届けられという、今度は日本が助ける番だ。
参照:産経新聞5月5日