若者の多くは選挙に行かないという統計が出ている。前回2012年の衆議院総選挙では60代の投票率が74.93%だったのに対し、30代は50.10%、20代は37.89%だった。
60代は4人に3人が投票するのに対し、30代は2人に1人、20代は3人に1人しか投票していない。マーケティング的に考えても、投票する可能性が高い高齢世代に狙いを絞るというのは極めて合理的な行動である。
しかも、現役世代が住むマンションはオートロックで政策ビラの投函もおぼつかない。若者は携帯主流で、候補者事務所の名簿からも漏れるため電話でのアプローチも出来ない。うっかりすると新聞の購読も節約している場合がある。しかも、握手しようにも若者は手をださないし、握手しただけで投票してくれる事はない。ところが、高齢世代の中には握手した、直接話したというだけで親しみをもってくれる人が少なからずいる。政策ビラを配っていても、高齢世代の方が受け取ってくれる確率が高い。候補者やその支援者たちの目にはだんだん若者の姿が映らなくなる。
こうした理由から政治家が訴える政策の内容も高齢者寄りになりがちだ。若者の雇用対策をしっかりやると言うよりも、高齢者向けの社会保障を充実すると言った方が票に結び付くからだ。すべての世代が払う消費税率を引き上げ、高齢者向けに偏った社会保障給付を充実するというのはその典型例。これを「シルバー民主主義」と呼ぶ。
若者がいい政治家を選ぼうと思っても、自分にとって魅力的な候補者がいない。だから投票に行かない。ますます政治家は若者向けの政策を打ち出さなくなるという、負の連鎖である。
若者に魅力的な候補者がいなくても、投票に行くしかない。とにかく、一票を投じることによって、世代の投票率が高まったと明らかになる。若者世代の投票率が高まればいずれ政治家も無視できなくなる。若者の声を拾おうとするようになる。若者世代にとって魅力的な政治家も増えていくだろう。
政治・行政にもやるべきことはある。投票率を引き上げるために、あらゆる施策を講じることだ。例えば、ポイント制にして、商品が安くなるなとのサービスを実施した自治体があるという。現在、選挙の投票日は一日だけで、しかも朝8時から夜8時に限られている。期日前投票という手もあるが、投票できる場所はごく限られているから、結局行きにくい。曜日や時間に関係なく働くサービス業の従業員や非正規労働者にとっては不便この上ない。投票に行かなくてもいいと言っているようなものだ。一定の期間中、何曜日でも、何時でも気軽に投票できるような仕組みを整えるべきだ。
悪い流れを断ち切るにはどうすればいいか。若者は将来負担が増えないように政治に歯止めをかけるべく、自らの義務と責任を果たす、政治に関心を持つ、グリーン民主主義にするしかない。かつては、汚職が横行した時代がかなり長くあり、国民はクリーンな政治を求めたが、今は若者の政治離れをストップするグリーン民主主義へ進むことが必要だ。