昨年の「和食」に続き「和紙 日本の手漉和紙技術」を無形文化遺産に登録されることが27日早朝に登録決定した。2年連続、国連教育科学文化機関(フランス・パリのユネスコ本部)が政府間委員会を開き、日本政府が推薦した「和紙」を登録決定した。文化庁は「日本の文化や伝統工芸の水準の高さを国際社会にアピールする原動力にしたい」と期待している。
今回登録された「和紙」は、国の重要無形文化財に指定されている「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)と「本美濃紙」(岐阜県美濃市)、「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)の3紙の技術で構成。職人らでつくる保存団体が、原料にクワ科の植物である「楮(こうぞ)」の樹皮のみを用いる伝統的な製法を守り伝えている。
石州半紙は、背でに2009年に単独で無形文化遺産になっていたのは、柳宗悦の民藝運動の努力があったとも私などは考える。江戸時代に入ってからは津和野・浜田両藩において徹底した紙専売制を行い、石州和紙の中で特に石州半紙の名は広く知られるようになった。初期の頃は様々な材料を用い、紙の大きさも様々であったが、江戸時代に入って材料、大きさともに統一されるようになり、生産性が飛躍的に向上した。一時期は6377戸を数えるほどであった和紙製造も戦中戦後にかけて急速に衰えていった。柳は、先人から代々伝わってきた文化だと評価、その指導にも力をいれた。特に、「出雲民芸紙」との繋がりが知られており、和紙研究家の寿岳文章らとともに調査研究をおこない、和紙の原点ともいえる正倉院宝物紙を復元して漉くことにも成功した。1968年、重要無形文化財に認定されました。この伝統技術をもつ安部栄四郎は、文化庁から雁皮紙を漉く伝統的技術を高く評価、「人間国宝」に指定された。なお、重要無形文化財の和紙には、他に、石州半紙(島根県)、本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)があった。石州半紙では石州和紙協同組合を設立、1969年に重要無形文化財、1989年に伝統的工芸品の指定を受けることに繋がった。2009年、ユネスコの無形文化遺産の登録が開始された初年に先行登録されていた。
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本美濃紙は2011年に登録を目指したが、石州半紙との類似性を指摘され登録が見送られた。そこで、政府は13年に本美濃紙と細川紙を追加し、名称を「和紙」として推薦し直した。ユネスコの補助機関が事前審査を行い、無形文化遺産に登録するよう今年10月に勧告していた。そのため、今回の「和紙」は石州半紙を拡張した形になるため、件数としては増えない。
文化庁によると、政府間委員会では、丈夫で柔らかい和紙の特質だけでなく、(1)後継者の育成(2)学校での体験事業(3)楮の栽培促進−など地域で保存活動が進められていることも、高く評価されたとみられる。
無形文化遺産は「世界遺産」や「記憶遺産」と並ぶユネスコの遺産事業の一つで、11月25日現在、世界で281件が登録。日本では「能楽」「歌舞伎」「京都祇園祭の山鉾(ぼこ)行事」と昨年の「和食」で22件となった。
「京都絞り工芸館」(京都市中京区)運営の吉岡信昌さん(45)は、日本料理アカデミーの活動を参考に 平成24年12月から「絞り染め」の無形文化遺産登録を目指し始めた。「夢はかなえるものだと教えてくれた。私たちも登録に向けた動きを続けたい」と意気込む。
「無形文化遺産」は「世界遺産」「記憶遺産」と並ぶユネスコの遺産事業の一つで、芸能、社会的慣習、祭礼行事、伝統工芸技術などが対象とする。2009年9月から登録が始まり、ユネスコの「無形文化遺産の保護に関する条約」に基づき登録して保護する。昨年12月時点で世界で281件が登録されている。「世界遺産」は建築物や自然など有形資産、「記憶遺産」は古文書など記録が対象。