鹿児島県の伊藤祐一郎知事は7日、記者会見し、九州電力川内原発1、2号機(同県薩摩川内市)の再稼働について「やむを得ないと判断した」として同意を表明した。原子力規制委員会の審査などが残っているが、事実上、全国の停止中の原発の再稼働が確実になった。再稼働は年明け以降の見通しだともいわれる。
自然界にも放射生物質が存在し、私たちは放射線を受けているということも、最近は良くわかってきていた。ブラジルのリゾート地・ガラパリ(大西洋に望む海岸リゾート地として有名)はトリウムを多く含むモナズ石の砂が沈積していることが原因で、一年間に大地から受ける放射線量が、8から15ミリシーベルトくらいになるといわれる。日本では大地から年間0.4ミリシーベルトとされる。
ところが、第二次世界大戦の最中の1940年以降に、核実験により大気圏内から、海上、大地にも舞い落ちる人工放射能が含まれるようになった。ストロンチウム90やセシウム137などがそのころから地球上に降下するようになったのだった。2008年に、各県から採取した土壌(表層5センチまで)検査でも、ストロンチウム90は、乾いた土1キログラム当たり平均2ベクレル、セシウム137は24ベクレル位だったので、当然、農作物などに吸収され、人体に移行していた。
人工放射性物質としては、ストロンチウム90、セシウム137、プルトニウム239なども含まれる。セシウム137は体を直接測定して体内含有量を知ることができるので、測定しやすいが、ストロンチウム90やプルトニウム239の体内量を知るには、人体組織を分析測定しなければ出来ない。最近、測定に利用され、名前をしるようになったホールボディ(全身)カウンタは、20センチもの厚い鉄の壁でできた小型の鉄室の中にベッドを置き、その上に人が30分ほど横たわっている間に、体の上下にあるガンマ線検出器を用いて測定をするものだ。
このようにして測定をされた人体内セシウム137の量は、1960年代には一人当たり500〜600ベクレルにも達していましたが、公に取りたざされることがなかった、私たちに知らされなかったということだ。その後、核実験の頻度が激減し、次第にその体内量も減少した。最近では、一人当たり20ベクレルくらいのレベルだったが、1986年チェルノブイリ事故の直後に少し上昇し、体内量が60ベクレルまで高まった。現在は、再び20ベクレルに戻っている(日本原子力文化振興財団)。
このように体内にあるセシウム137のレベルが、食物中のセシウム137のレベルに比較的よく追随するのは、人体への吸収もよいかわりに、体外への排出も比較的早いからだとされる。1960年代中ごろ、核実験が大気圏内でしばしば行われていた為、1人1日分の食事の中にストロンチウム90は0.5ベクレル、セシウム137は1〜2ベクレルほど入っていたといわれる。
3.11以降、自然放射性物質が食品に含まれると改めて知るようになった。その主なものはカリウム40で、普通のカリウムに0.0117パーセント混在しているとされる。1日に白米300グラム、魚、牛肉、牛乳、ホウレンソウを各200グラムずつ食べると仮定すると、1日に約100ベクレルのカリウム40を食べる計算になるとされる。ただし、カリウムは体内で一定の濃度に調整されるため、それ以上食べても人体のカリウム40の量は増えないとされる。
自然界にも、さまざまな岩石に含まれる放射性物質があり、その量を測定した結果をみると、岩石の種類によって大きく異なっている。カリウム40は、花崗岩1キログラム当たり1000ベクレル含まれているのに対し、石灰岩では90ベクレルほどだ。ウラン238も、花崗岩に60ベクレル、石灰岩に30ベクレルほど含まれる。トリウム232は、花崗岩の80ベクレルに対し、石灰岩では7ベクレル。そのため、花崗岩でできた敷石の上では、放射線の量が高く、石灰岩でできた鍾乳洞の中で、放射線の量が低い。
福島第一原子力発電所の事故で、放射性セシウムなどが海に流出したため地方自治体が海産物の検査をおこなっている。そのため福島県や近隣の県の主要な港で水揚げされる海水産物は、試験漁猟で放射性セシウムの量が国の定めた基準値以下であることが確認できたものが出荷されている。一方で、今も廃棄を余儀なくしている地域、および福島県沖では一部のタコや貝を対象に行っている試験漁猟以外は、全て禁止されている。