新聞やマスコミは日常的なことでない特殊で希少な事例を記事にするのが通例だ。それが、「親日」の人々より、「反日」の人々を取材しようとした朝日新聞の姿勢にも代表されて、その話から増幅された悪感情の溝は深まるばかりになった。日本企業への投石、破壊行為、スポーツ大会でのヘイトスピーチを掲げた横断幕などとどまるところがないのに日本人は辟易した。
しかし、外務省が2014年に発表したASEAN調査(インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの7ヶ国)によれば、ASEAN諸国の人たちが「最も信頼できる国」として挙げたのは、アメリカ、イギリスを抑えて、日本が1位だった。 日本が33パーセント(1位)、アメリカが16パーセント(2位)、イギリスが6パーセント(3位)なのだ。アメリカの倍の支持を得て日本が1位だった。ちなみに中国は5パーセント、ロシアは3パーセント、韓国は2パーセントだった。
また、ASEANにとって重要な将来のパートナーとして挙げた国も、日本が1位(60パーセント)で、2位が中国(43パーセント)、3位がアメリカ(40パーセント)の順だった。 日本はASEAN諸国からこれほど高い信頼を得ており、また、彼らがとても親日的であることは重要だ。
21世紀の世界の中で日本の技術力は、いよいよ注目である。 日本の技術力はアジア諸国をはじめ、中東、中南米、アフリカなど、これから伸びる新興地域を発展させる力を持っている。 特に、発電技術、水技術、鉄道技術、公害対策技術などいずれも新興国の発展には欠かせない。ASEAN10ヶ国で人口規模は6億人を有し、ベトナム、タイ、シンガポール、フィリピン、ミャンマー、マレーシア、ラオス、インドネシア、カンボジア、ブルネイは親日的な国家だ。さらに、インドは12億人、バングラディッシュには1億5000万人の人口規模であり、これらも親日的な国々で、ここに日本を加えれば、20億人になる。
中国、韓国、北朝鮮の合計人口約14億人であるので、「親日アジア」はマーケットとしても、「反日アジア」を凌駕するのである。この「親日アジア」の国々が連携し、日本の技術力を提供してインフラ整備をして友好的に発展に努めれば、大繁栄する時代が起きるのではないか。新興国の発展のためには日本の支援が不可欠である。もちろん、先進国のアメリカ、ヨーロッパも日本の技術力と経済力は無視できないのは変わりない。
ところが、日本が特に肩入れしてきた東北アジアの情勢を見てみると、中国は国内の経済格差が広がり不安定様相があるので、そうなると政治的な関連が強い北朝鮮も大打撃をこうむるのは避けられず、おっつけ韓国にもかかる負担には耐えられなくなるなどの可能性は十分に考えられる。日本に見向きもせず、これら三国の連携強化して進む未来像はどうなるのだろうか。
他方、これまで後発に見られていたASEAN諸国は、いよいよ一大飛躍期を迎えようとしている。日本が技術支援をしていけば飛躍する可能性が高い。発展に必要な技術には、水、電気、鉄道、工作機械、公害対策技術、安全技術など、それらは日本に揃っている。 ASEAN、東南アジアが発展していけば、急速に強力な市場となり、日本企業にとって大きなチャンスが生まれる。
日本はようやく経済が着実に持ち直しつつある。EUの不況に連鎖しないよう、経済界はかじ取りするようになっている。近年の中では最大のチャンスが巡ってきているとも言えそうな状況にある。この流れは本物だと、往年の経済評論家・長谷川慶太郎は見て、これからはASEANに目をむけて日本の経済界は伸びていけばいいと予測する。モノづくりに長けた、高度な技術力を背景に、友好的なアジアの国々と日本が平和的に世界をけん引していくことになり、絵空事でなく世界の中の日本は注目されるに足る国となる。反日的なキャンペーンもこれ鳴りを潜めるのではないか。
長谷川 慶太郎 『大破局の「反日」アジア、大繁栄の「親日」アジア』(PHP研究所、2014)