日本のODAは、アジア諸国へ賠償を行うのに、金銭に替えていわば労働で埋め合わせをするために始められました。占領国であるアメリカの負担を軽減させつつ、日本の復興を促進させるのがねらいでしたが、日本が経済発展をとげるにつれて貢献度も拡大し、国際社会での外交力強化に役立っています。
人道的支援と外交手段の両面を併せ持つODAとは、開発途上国の経済発展や貧困削減などにつながります。国連などの国際機関を通じる多国間援助と二国間援助に大別され、日本の場合、多国間援助が約40%、二国間援助が約60%となっています。
有償資金協力は低金利かつ返済期間の長い(通常10年)、緩やかな条件で開発資金を貸し付けるもので、円借款とも呼ばれるのは、円建てで行うためです。おもに道路、空港、発電所など大型のインフラ整備に利用されます。
無償資金協力は、おもに学校や病院、およびそこで使用する資材を提供するものです。道路や港湾などが対象となることもあります。技術協力は専門技術者を相手国に派遣したり、相手国の人を日本に招いて研修を受けてもらったりするものです。海外青年協力隊がよく知られています。
現在、ODA拠出国の1位はベトナムとなっており、国土を南北に結ぶ高速道路や港湾、火力発電所の建設などにあてられています。2位のアフガニスタンでは道路建設や給水・灌漑施設の整備、識字教育などが、3位のインドではユニセフと連携してポリオの撲滅計画などが進められています(2012年度)。そのほかソマリアなどでの海賊対策、アジアを中心とした感染症対策、人材育成、法整備、環境対策なども重要な課題となっています。また、インドネシアやフィリピンに巡視船を供与することで中国の動きを牽制するといったことも行われており、自衛隊という限定された軍事力しか持たない日本にとって、重要な外交手段となっています。
実のところ、少子高齢社会を迎えて厳しい財政状態が続く中、ODAの予算額は右肩下がりです。本年度ODAに向けられる予算は5502億円。防衛費の約9分の1、公共事業費の約11分の1に相当し、決して小さな金額ではないものの、ピークであった1997年度の1兆1687億円に比べると約半額です。
ただし、有償で貸したお金がもどってきてそれを併せて活用するため、予算が半減したからといって、国際貢献力や外交力まで半減するわけではありません。2000年には日本が拠出額1位であったのに対して、2013年度(暫定値)はアメリカ、イギリス、ドイツ、日本、フランスという順になっており、他国が拠出額を増やしていく中で、相対的に発言力が低下する怖れはあり得ます。
ODAは、すべてがうまく行っているわけではありません。ODAには光の面とともに影の面もあります。タイのサムカットプラカンの汚水処理場建設のような失敗例も起きています。「円借款では、円高が進むと資金を借りた国の負担が増えてしまう」という批判も受けています。他方、最近は「自国の財政が苦しいのに、なぜ他国を助けるのか」という批判も根強くなって、外務省では、「ODAを通じて、とくにアジア地域の経済発展や社会の安定に貢献することは、結果的に日本の安全保障につながる」と説明しています。
現政権では災害救助などの軍事でない分野に限り、ODAでの外国軍への支援を認めることなども検討しており、年内に新しい大綱を閣議決定の予定だということです。
出典:
The PAGE (7/30 広沢大之助)