防衛省は13日、同日午前1時20分ごろから30分ごろにかけ、北朝鮮南西部の開城(ケソン)付近から、2発の弾道ミサイルが北東に向けて発射されたと発表した。ミサイルは2発とも約500キロ飛んで、日本海上に落下したとみられるという。
北朝鮮は、先月末から、短距離弾道ミサイルやロケット弾の発射を繰り返している。9日午前4時ごろと同20分ごろ、黄海北道(ファンヘプクト)・平山(ピョンサン)付近から北東方向に短距離弾道ミサイルを1発ずつ発射した。日本政府は、国連安全保障理事会の決議違反であるうえ、航空機や艦船の安全に関わるとして、北京の日本大使館を通じて北朝鮮に抗議した。
韓国軍合同参謀本部によると、今回発射した2発の飛距離はいずれも約500キロで、日本海の公海上に落下した。船などへの被害は確認されていない。
北朝鮮は6月29日に短距離弾道ミサイル2発を発射したほか、6月26日と7月2日にはロケット弾を計5発発射。いずれも北朝鮮東海岸の元山(ウォンサン)付近から発射していた。これに対し、今回は南西部から朝鮮半島を横断する形で飛ばしている。
日本政府は、日本から比較的離れた場所に落下したことなどから、「日本を意識したものではない」(首相周辺)と分析する。
発射したのは「スカッド」とみられる。スカッドは発射台付きの車両に載せて移動できるため、発射の兆候を事前につかむのは難しいとされる。韓国国防省関係者は「いつ、どこからでも発射できるという奇襲能力を誇示しようとした可能性もある」と指摘する。
北朝鮮は6月30日、国防委員会が韓国に対し、関係改善の新たな局面を開くため、中傷や軍事的な敵対行為の中止を求める「特別提案」を発表していた。短期間のうちに、挑発したり、接近しようとしたりを繰り返す姿勢について、韓国では、関係改善の呼びかけに応じない韓国への不満▽米中戦略・経済対話に対する牽制(けんせい)▽北朝鮮内の引き締め▽通常の軍事訓練――などの見方がある。
■拉致調査優先、日本抗議のみ
日本政府は、抗議以上の措置には踏み切らない方針だ。
背景には、拉致問題を進展させたい安倍晋三首相の強い思いがある。北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査と引き換えに、制裁の一部を解除したばかり。再調査を担う特別調査委員会に日本政府は直接関与しておらず、見守らざるを得ないのが実情だ。岸田文雄外相は記者団に、「(再調査の)進捗(しんちょく)状況を見極めていく方針に変わりはない」と述べた。
日本政府は、日本を射程に入れた長距離弾道ミサイルの発射や核実験が実施された場合には、再制裁など「北朝鮮に極めて厳しい状況になる」(菅義偉官房長官)ことをすでに北朝鮮側に伝えているという。核・ミサイル問題で日米韓の連携を求める米国などに配慮を示したものだ。(東岡徹=ソウル、広島敦史)
出典:
朝日新聞社