日豪両政府は、核拡散防止条約(NPT)の検討会議において、80カ国が賛同した核兵器の不使用を求める「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に参加しなかった。廃絶を訴えながら核抑止力に頼る矛盾がある。
アジアにおける日本侵犯の脅威でそうなるのか、日米基軸の安全保障が絡むゆえか、政治は国民を年末までの判断にと遠巻きながら巻き込んでいく。公明党の「集団的自衛権」「憲法改正」への判断がどうなるかと、弱小野党などとは比べ物にならない、重要度が増しているのがありありと見える、このところ。
豪州も、日本同様なNPT声明に参加しなかった国だ。しかし、そうした政治背景でも、ティルマン・ラフさん(メルボルン大ノッサル世界保健研究所准教授:核戦争防止国際医師会議と核兵器廃絶国際キャンペーンの二つの国際組織で共同代表)は、果敢に運動を展開する。一昨年の5月中旬、広島市で24カ国の赤十字・赤新月社の代表が核兵器廃絶に向け話し合った国際会議で、核兵器の人体や環境への影響を検討する分科会の司会も務めた。
ラフさんは家族の歴史は戦争に翻弄された、それゆえに生半可な対応は結果、先の大戦の二の舞になる恐れを感じているのだろう。ドイツ人の曽祖父母はキリスト教のコミュニティー作りに参加してパレスチナへ移住し、第一次世界大戦でエジプトへ連行された。祖父母も第二次世界大戦でパレスチナからオーストラリアへ連行された。祖父は3人の兄弟を戦闘で失った。祖母は「次に戦争が起きるなら、私の頭上に最初の爆弾を落としてほしい」と口癖のように話し、反戦の精神を身近に感じて育ったという。
ベトナム反戦運動などを通じ、政府を動かす市民の力を実感した。1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会議(IPPNW)には82年から参加。同会議を母体とした核兵器禁止条約を求める国際組織「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の発足に関わり、ICAN初の事務所を2006年に豪メルボルンに発足させた。現在、60カ国以上に広がった同キャンペーンの共同代表を務める。核不拡散の進展には非核保有国のリーダーシップが重要だと訴えている。
こうした真摯な平和へ向けての活動にまい進する人には、家族の凄絶な体験が言い残されているケース比較的多い。言ってみれば、私もそうかもしれない。大正生まれの父の世代は、有無を言わせず徴兵されて、この世代の男性の死亡率は非常に高い。若い元気な男が減少した時代に、未婚の女性も増加していた「女がトラック一台に婿一人」などと、言われていたらしい。
理不尽な扱いを受けて命を落とす戦争はなくすべきだと、今も色々な職業の人達が活動に加わり、豪州の学者は、アカデミズムに立ち位置を得て訴えている。
ちょうど一年前のインタビュー記事だけれど、重要な言葉が多いのでご参考までにご紹介します。
参考:毎日新聞 2013年06月05日
2014年05月31日
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