安重根記念館の開設は、昨年6月に韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が中国の習近平国家主席に記念碑設置への協力を要請したのがきっかけだった。日本外務省は韓国側の動きが表面化に対して、両国に日本の立場を説明し、計画の撤回を求めてきた。ハルビン駅に設置されるため、黒竜江省を管轄する在瀋陽の日本総領事館員も、地元関係者に日本の国民感情が悪化する懸念を伝えていたという。
もっとも、当初は中国側が記念碑建立に消極的な姿勢だったこともあり、「先手を打った大規模な抗議活動は行わなかった」(政府関係者)。結果は、「記念碑」どころか記念館の建設となり、外務省幹部は「情報入手が遅くなったことは否めない」と情報収集が後手に回ったことを認めた。外務省は各国に駐在する日本大使に中韓両国の誤った主張に積極的に反論するよう指示を出している。今年に入り、米英両国駐在大使が現地メディアで、中国大使による対日批判に反論するなどその機会は増えつつある。ただ省内には「目立ちすぎるとかえって反日活動に火を付けかねない」との消極論も消えず、日本の対外発信は中韓両国に比べ、なお及び腰だ。
中国外務省の洪報道官は安重根を「著名な抗日義士で、中国人民の尊敬を受けている」と言い切った上で、安倍晋三首相の靖国神社参拝と関連づけて「歴史を適切に正視して反省し、参拝問題に関する誤った立場を修正するよう、日本側に要求する」と訴えた。菅官房長官は20日の会見で、「安重根はわが国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ。(中韓両国の動きは)地域の平和と協力関係の構築に資するものではない」と両国に抗議した。