1.国と国との関係は、個人と同じように、「目の前の損得」だけを考えて、処理すべきではなく、過去の歴史(過去に恩恵を受けたこと、相手に被害を与えたことなどを含め)と今後のビジョンや長期戦略に基づき対処すべきと思います。今、日本は島国根性を捨て、また重箱の隅をつつくような議論はやめて、もっと大局的に、懐を大きく持った対応をすべきです。
2.そして何より基本は、一定のリスクを回避しつつも、相互の信頼関係を築き、友好関係を維持することに、最大の努力をすべきと思います。中国を敵視することに偏重した石原前都知事は昔、故渡辺美智雄らと一緒に、青嵐会を作り、日中正常化も問題外としてきた人でした。多くの日本人が、それに振り回されていることは日本として不幸です。
3.領土問題は、‘72年の国交正常化の折の周恩来と田中角栄・大平正芳の面談時、またその後のケ小平との会談時も、尖閣問題が話題に出て、相手から「棚上げ」が提案され、ことの深刻化は避けられました(外務省の記録に残っている)。しかし、日本側は、その後には忘れ去ったように国民に問題の前後を伝えてきませんでした、そのことが問題であり、一念の強い政治家の思うつぼになって、国交正常化40年の思いは水泡に帰そうとしています。
4.その前提には中国が、対日戦後賠償を放棄してくれた事実に対して、節度ある儀礼を忘れないということがあるはずです。
終戦後、1972年日中国交正常化交渉の際、周恩来首相は、中国は日本に対する賠償を放棄しました。これで、当時最貧に喘ぐ日本国がどれだけ助かったか、という事実です。日本が中国に戦争で与えた損害は、計り知れず(一説では、6000億ドル=48兆円)とも言われています。その後賠償の代わりに、円借その他で、払ったではないかと考える向きもありますが、円借他で日本が中国に出した金が合計で350億ドル程度と考えられ、試算の仕方にもよりますが、日本としては自省すべきです。
一方、日本は先の日清戦争で勝利したときに、中国から台湾、澎湖列島、遼東半島(その後三国干渉で返却)を割譲させた他、3.5億円、中国の国家予算の3年半分に相当する巨額な賠償金をとっている。
こういう点から歴史的経過を見れば、仮に尖閣諸島の領有が歴史的、または法的に日本の領有だと言うような点を強調するだけで礼儀に反すると言えまいか。上記の賠償放棄の歴史を考え、将来の日中関係の重要さを考えて、共同開発の道を探るなど、前向きに、柔軟に、まずは対話の試みをすべきと思います。
中日新聞は、次の社説を掲げていますが、私は全く同感です。
日中国交正常化から昨日(2013年)でちょうど四十年。尖閣諸島の国有化をめぐって、戦後最大の危機に直面する今、原点を考えてみる。日清戦争で巨額の賠償金を払った中国は日中戦争での賠償金請求を放棄した。強い反日感情が残る民衆を「日本人民も被害者」「賠償金は日本国民の負担になる」という理屈を立て、説得した。
先人たちの覚悟と知恵から学ぶ必要がある。互いに欠かせない隣国である以上、新たな関係を築く努力 を重ねるしかない。政治だけでなく、日中の国民が試されている。
5.尖閣問題だけでなく、今後、全般的に日中関係正常化のするためには、次のことを実現すべきと思います。
A.
歴史認識問題を解決するため、日本は「日本の中国侵略」への事実関係を、教科書でも学べるようにすること。中国侵略が、当時の関東軍の暴走により始まったことは、中国の加担もあったなしかと言われる状況も含めて、事実を知っていこうと態度は大事です。さらに言えば、襟を正してわが身を振り返る姿勢を政治家がしっかりもってこそ、国民全体が国際的に信頼されるのです。
B.
靖国神社から、A級戦犯慰霊は、外す。客観的に見て、今のままでは、「太平洋戦争」を是認していると思われても仕方がない。中国や韓国から言われなくても、日本人から見ても疑問だらけの経緯が靖国神社にはあるのが明白です。
C.
領土問題は、棚上げを両国で誠意をもって合意し、周辺の資源利用に関しては、共同利用を協議する。最終的には、中露の領土解決成功のように、ピースゾーン(どちらにも含まないが平和に運航する)などで解決を目指す方向性を見出していく。
干支を生み出した知恵は、中国に起源があるのは先刻周知です。臥薪嘗胆、塞翁が馬、これらの知恵もさすずかりました。
あとは、今年こそ ウマく やるだけです。