西ドイツの名首相であったアデナウアーが、アメリカのアイゼンハウアー大統領に会った時、こんなことを言ったという。
第一は、「人生というものは70歳にしてはじめてわかるものである。だから70歳にならないうちは、ほんとうは人生について語る資格がない」ということ、
第二には、「いくら年をとって老人になっても、死ぬまで何か仕事を持つことが大事だ」ということである。
第三には、驚いたことに「怒りを持たなくてはいけない」というのである。
日本人は、普通できるだけ腹をたてずに、円満に人と接し、いわば談笑のうちに事を運ぶ、それがいちばん望ましいとだれもが考えるのではないか。ところが、アデナウアーは“怒りを持て”、単なる個人的な感情ではない、もっと高い立場に立った怒り、つまり公憤をいっているのであろう。
まして昨今のように、日本といわず世界といわず、難局に直面し、むずかしい問題が山積している折には、指導者はすべからく私情にかられず、公のための怒りを持って事にあたることが肝要であろう。
英米のシリア情勢が混沌としていた時期、ふとこのような言葉を抱いた英国の政治家がいたのだろうと思った。
参考文献:
松下幸之助『指導者の条件』(PHP研究所)より