『人生の波に乗る人乗れない人』(七澤友一郎 たちばな出版)という本で、「無用の用」という荘子の言葉が紹介されて、一見何の役にも立たないと思われるものが、実は大切な働きをしていることを説いている。決して合理的でもなく、効率的でもなく、損得で考えてもムダ、というものことだ。
よく例に出されるのが百匹働きアリの例。必ずその中の20匹は働かないで怠けているという実験結果を覆そうと、その20匹をどけて80匹にすると、少なくなった中の2割は働かなくなってしまうそうだ。
何匹にしても同じことで、必ずそのうちの2割は働かないそういう習性がアリにはあるそうなのだ。
これは、アリだけでなく、たとえばサーカスの虎でも似たようなことが起きるという。
これはムツゴロウこと畑正憲さんが体験した話がいい例だ。あるサーカスの10匹の虎、8匹はシベリア産の虎で、2匹はインド産。シベリア産の虎は非常に俊敏で頭がよく、芸をすぐに覚える。
ところが、インド産の虎は怠け者でちっとも芸を覚えようとしない。
「どうしてこんな物覚えの悪い虎を置いておくんですか? 全部シベリア産にすればいいじゃないですか」
とムツゴロウさんが質問した。するとサーカスの人は、「いや、これでいいんです。全部をシベリア産にしてしまうと、みんな神経過敏だから苛立ってすぐにケンカを始めてしまいます。インド産のが2匹いるお陰で、なごやかな雰囲気になって全体の調和が保たれているんです」と教えられた、という。
昨日の国会、発電と送配電を分離する電力改革法案やセイフティーネットにからむ生活保護法改正案など、みんなの党にとっても重要な法案を先に採決して、問責採決もできたのに、と国民はみていた。両法案の廃案のあおりをくらって、就労自立給付金の創設なども見送られる。受給者の労賃の一部を積立金とみなし、保護を抜けた際に支給するものだった。政党間での泥仕合を演じたと国民の目にも映ったが、これもトラの例のような意味もあるのかもしれない。国民が政党をみているかのいよいよの平成維新の結果が、一か月後の参院選に明らかになり、投票率と合わせて国民の政治への関心度も図られるということではないだろうか。20%のアリにはなりたくない。