★今でも「湧き水」の出るあたりに説明板がある
★典型的な手賀沼沿いの「ハケの道」
さて、いよいよの富士山が6月下旬、ユネスコ世界文化遺産に登録されることなる。
富士山は、山域から山頂への登拝及び山麓の霊地への巡礼を通じて、神仏の霊力を獲得し、自らの擬死再生を求めるという独特の性質を持つ山岳信仰の頂点にある。このため浮世絵など、多くの芸術作品に取り上げられて、海外の芸術家にも影響を与えてもきた。こうした信仰の対象・芸術の源泉である富士山は、日本と日本の文化を象徴する山として、いよいよ世界的にも確固たる認識を得ることになるのだ。
富士山の世界遺産の構成資産としては、富士山をご神体とする浅間神社や、参拝者が宿泊し観光の原型をつくったと言われる御師(おし)住宅、そして忍野八海・白糸の滝・富士五湖などもあげられる。ユネスコの諮問機関イコモスは、富士山の影響を「日本をはるかに越えて及んでおり、今や国家的意義を広範に越えている」と評価した。
そして、こうした世界的・普遍的な文化価値を理解する要素のひとつが富士山の「湧水」だ。富士山信仰の原点である富士山本宮浅間大社は、9世紀、噴火を繰り返してきた山を鎮めるため、水が豊富に湧き出す地に建てられた神社だ。祀られているのは、水の女神。つまり、富士山への信仰は即ち、神秘に満ちた水の神への祈りだという。
一年の降水量が20億トンを超える富士山は、麓に沢山の湧水をもち、“水の山”と呼ばれている。しかし、山の表面には川が見えず、地下のメカニズムは今も多くの謎に満ちている。富士山の地層の隙間を走る巨大な地下水脈、洞窟に出現した「氷の宮殿」、忍野八海の秘められた水中トンネル、そして海底に富士山の水が湧き出ているとされる駿河湾などによって、人びとの暮らしや信仰や、絵画などにも影響を与えた。
江戸時代には、庶民の間には「富士講」があり、湧水を使って川と池と滝が作られた御師住宅に泊まり、湧水地である忍野八海や白糸の滝、湖などの自然の聖地を巡礼したとされる。こうした水辺が、人類の「文化遺産」を創り出してきていたのを知ったら、我孫子のハケの道も歩いて探ってみてはどうだろうか。
NHKスペシャル 富士山の湧水
2013年6月30日(日)
午後9時00分〜9時58分総合