現在の中高年は「結婚するのが当たり前」という風潮の中で生きてきた。その昔は、「一緒に苦労してくれないか?」とのプロポーズでも、結婚したという。今は「二人で幸せになろう」と言って結婚する。苦労しようと言って一緒になれば、苦労するのが当たりまえだったが、幸せになれないでちょっとした苦労や困難があるだけでも、今の結婚は約束違反だから、昔に比べ離婚が増えているのではなかとの話もされる。
しかし、生活に不自由なくても、相手がいないことが毎日ならば、ただ「相手がいる」だけでも有り難いとい思う、モノではなくて気持ちがつながる相手が必要になるのも人間だ。やはり独身者は現代でも少数派であるから、会社勤めを終えた時に孤立感は一層強まる。心がふと折れてしまわないように、自衛のための新たな絆づくりがいる。
国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(2011/11/25)、いわゆる独身者調査と呼ばれるもの発表によると、異性の交際相手がいない18〜34歳の未婚者が男性で61・4%、女性で49・5%であることが分かった。5年前の前回調査から男性で9・2ポイント、女性4・8ポイントと急伸した。また、性経験のない未婚者は、男性は36・2%、女性で38・7%と高い数値であることが分かった。この調査は18〜34歳の未婚者を対象としており、男性で3667人、女性3406人に昨年6月、 アンケート調査したもの。前回は05年に実施していた。
50歳時点で1度も結婚経験がない人の割合を示す生涯未婚率は男性で2割、女性も1割を超えた。熟年離婚も多い。独身の中高年の間で、つかず離れずの「緩やかな絆」を心の支えが必要であり、心身の不調や老後の不安に、結婚とは別の方法で備えようとしている。
中高年専門結婚仲介の太陽の会(東京都中野区)によると、10年前から別居伴侶を選択するカップルが増え、今では年百数十組のうち2割以上を占める。これまでは「離婚して子どもがいる」「財産や相続の問題が絡んで親族から反対される」などの理由が多かった。斎藤尚正会長は「相方は欲しいけど、今さら生活のリズムは変えられないという女性の希望が目立つ」と近年の傾向を語る。今や珍しくない独身の会社員が次の生き方を模索する時、一人で生きていく不安やリスクをいかに和らげるかは切実な問題だ。
名古屋市は12年から、60歳以上を対象にしたシェアハウス型市営住宅「ナゴヤ家(か)ホーム」の展開を始めた。60〜70平方メートルの団地の空室を改築。居間やキッチン、風呂などの共用部と、独立した2〜3部屋で構成する。今年は3月入居分として10室、計26人分を用意した。今後10年で100室に増やす計画だ。
これまで単身者は55平方メートル以下の物件しか応募できず、競争率は40倍超と高い。市住宅管理課の杉岡博之係長は「狙いは2つ。単身者の急増という社会変化への対応と、市の把握分だけで年40〜60件に達する孤立死を防ぐため」と話す。性格や習慣が違う人との共同生活の衝突は不安だが、市が契約したNPO法人が相談役として定期巡回する点は安心材料だ。「50歳を過ぎて平板な毎日だった。新しいチャレンジのようで期待すらある」という。
「単身高齢化が進む日本は、介護に至らない中高年の暮らし方を社会全体で考える必要がある。緩やかな関係性を築きやすいシェアハウスは、経済と精神の両面で生活を豊かにする選択肢の一つ」。園田真理子明治大学教授は強調する。
NPO法人SSSネットワーク(東京都新宿区)は、独身の中高年女性が同じ沿線に住む4〜8人で小グループを作り、災害時に相互に安否確認をする「災害ネット」を組織する。現在、約200人の会員がいる。地震があると夜中でも「大丈夫?」「私は大丈夫」と携帯メールでやりとりするほか、月1回は約2時間のランチやお茶会で集まる。
法律上の婚姻関係はないが、互いを尊重し困った時は助け合うことを約束した間柄になれる。恋人以上夫婦未満の関係が、別居伴侶。電話は週1回で、車で1時間半かかる相手に会うのは月1回くらい。それでも「互いを理解し合う相手がいるのは心強い。1年1年を大切に生きていく」と言うことだ。
参照:
日経新聞1月21日