1キロ・グラム当たり8000ベクレル超の放射性物質を含むごみ焼却灰を巡り、県は21日、県営手賀沼終末処理場(我孫子、印西市)内で、灰の一時保管施設の建設に着手した。10月末の一部稼働を目指す。柏市などでの汚染灰の保管が限界に近いとして、県は条例上の手続きを省いて計画を進めるなど、異例の対応を取って着工を急いだ。印西市は、施設の恒久化を懸念し、我孫子市は着工に反発を強めている。
保管施設の建築確認手続きが21日に終了したため、県は同日、手賀沼処理場内に着工を示す看板を設置するなど、建築へ向けた作業を始めた。11月末までに、保管庫5棟を備えた施設を完成させる。10月末までに最低1棟完成させ、灰の受け入れを開始。完成後、年度内に計9棟に増やし、汚染灰の発生量に応じて最大計15棟まで増築する。
我孫子市には、星野順一郎市長らが市議会放射能対策特別委員会に出席中、県から着工の通知があった。星野市長が確認のため中座し、委員会は約30分にわたって中断。再開後、星野市長は「県の強行的な行為は甚だ遺憾だ」と述べ、議員から「法的措置を取るべきだ」などと声が飛んだ。
印西市の板倉正直市長は着工を受け、談話を発表した。「市民感情を考えると容認できない」としたうえで、「今後、事業実施にあたっては徹底した安全確保と、一時保管が恒久化しないよう強く求めていく」とした。市幹部は「県は工事をやめる気配はない。市として出来ることを考えていくしかない」と語った。
県が両市の反対を押し切って着工したのは、完成が遅れると、汚染灰を抱える柏市や松戸市などのごみ収集に支障を来しかねないからだ。当初は10月中旬の完成を目指していた。
県によると、柏、松戸、流山市と印西地区環境整備事業組合(印西、白井市、栄町)のごみ焼却施設内などに、8000ベクレル超の灰が8月末現在で計3835トン保管されている。
我孫子市では8000ベクレルを超えていないが、放射性セシウムが付着しやすく、焼却すると灰のセシウム濃度が高くなる草木を燃やさずに保管している。4市1組合で保管量は計1万5049トンに上る。秋には、一般家庭や公園などで刈られた草木が焼却施設に大量に持ち込まれるため、柏市などから「このままでは焼却施設の保管場所がなくなり、ごみ収集の中止に追い込まれる」との声が出ていた。
柏市の秋山浩保市長は21日、「難しい決断をされたことに感謝する」とのコメントを発表した。
出典:2012年9月22日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20120922-OYT8T00088.htm