原発に頼らず、地域にあった再生可能エネルギーによる自給を目指そうと、全国の中小企業の経営者ら400人が参加して「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」(エネ経会議)が発足した。原発の再稼働を求める中央の経済界とは一線を画し、脱原発によって自立を目指す地域経済からの問題提だ。
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「原発がないと豊かな生活ができないのか。本当の豊かさとは何か。原発がない方が健全な国、地域づくりができるという対案を示し、実践したい」3月20日、東京都内で開かれたエネ経会議の設立総会で、世話役代表の鈴木悌介(ていすけ)さん(56)=小田原箱根商工会議所副会頭=が訴えた。
経団連、経済同友会、日本商工会議所の財界3団体は、「安全確保と地元の同意」を条件に、原発再稼働を求めている。「経済界」の意見として「原発がないと電気が足りなくなり、日本の産業は空洞化する。GDP(国内総生産)が下がり、経済が沈み、豊かな生活ができなくなり、不幸になる」とひとくくりにされることに、鈴木さんは疑問を感じてきた。電力料金に上乗せされ、原発立地自治体などに交付される税源を再生可能エネルギー実用化にあてれば、新たな雇用を生むと考える。
一方、愛媛県商工会議所連合会の白石省三会頭は3月16日記者会見し、四国電力伊方原発について、「運転開始から30年以上経過した1、2号機は再稼働せず、廃炉にすべきだ」との見解を表明した。電力業界の影響力の強い地方で、商工会議所トップが廃炉を求めるのは極めて異例なことだ。
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東京電力福島第1原発事故をきっかけに、神奈川県小田原市は、太陽光を中心とした再生可能エネルギー導入の検討を本格的に始めた。市民出資を募り、小学校の屋上など公共施設に太陽光発電のパネルを設置するなどの事業化を目指している。「小田原電力」を生み出す取り組みだ。
小田原市は福島原発から約300キロ離れているが、昨年、足柄茶から国の暫定規制値を超える放射性セ
シウムが検出され、出荷できなくなった。また計画停電などで産業や観光が大打撃を受けた。エネ経会
議アドバイザーとして設立総会に出席した加藤憲一市長は「安全との触れ込みでエネルギーをふんだん
に使っていたが、天がくだした大きな警鐘と受け止める」と語った。
同じくアドバイザーの田中幹夫・富山県南砺(なんと)市長は、小規模水力や太陽光、バイオマスな
ど地域の資源を生かしたエコビレッジ構想を紹介した。エネ経会議は、こうした先進地の情報を共有し、
実践に生かす。鈴木さんは「同時多発的に地域でエネルギー自給の仕組みを実現させ、ネットワークを
創りたい」と話している。
毎日新聞2012年04月16日東京朝刊