福島原発からセシウムやヨウ素は揮発性で軽いので薄まりながらも気流に乗って拡散しやすいため、注意基準とされていますが、プルトニウム241も福島県内で今3月初めに放射線医学総合研究所によって検出されたと報告がされました。3.11の原発事故が起きるまで、そういう事態は起きえないし、水に混ぜて飲んでも安全だとまで発言した東大教授の大橋弘忠先生(Youbube)も東京電力に勤務していた時代があった。昨年10月 北陸電力「原子力安全信頼会議」の委員に就任(Wikipedia)。
文部科学省による昨年9月の調査結果では、同位体のプルトニウム238、239、240を検出していたが、241は調査対象外だったので、
英国の科学電子雑誌に3月8日、発表したとされる。
プルトニウムは本来は重い元素なので、「それほど遠くには飛散しない」といわれていました。チェルノブイリ事故では、プルトニウム拡散は10km以内でした(欧州を覆ったのは主にセシウムとヨウ素)ようでした。今後50年間の被曝線量は0・44ミリ・シーベルトと試算され、健康影響はほとんどないと研究チームはみています。ただし、241が崩壊して生じる放射性物質のアメリシウムは植物へ移行しやすいという研究もあり、「継続調査が必要だ」としているのです。文科省は241をこれまで調査から外していた理由について、「検査時間がかかるため、同じβ核種のストロンチウムを優先した」と説明しています。
米国は、スリーマイル事故をきっかけに、プルトニウム高速増殖炉を作ることは諦め、一般的な原発(軽水炉)でさえ1基も作っていのでした。
それでも、日本は世界でただ1国プルトニウム高速増殖炉を完成へと向かい、「もんじゅ」の度重なる失敗にもかかわらず、政府が推進役でやってきました。研究者、企業と地方行政ぐるみでプルトニウム至上主義になっていき、熔融塩炉などの可能性を排斥していきました。その契機を知る手がかりとなるのが下記の本とその概要です。
多胡敬彦 著 「日本発 次世代エネルギー 挑戦する技術者たち」 学習研究社
トリウム熔融塩炉はいつどこで誕生したのか?
→A:1965年アメリカのオークリッジ国立研究所で。
Q:対抗馬は何だったのか?
→A:プルトニウム高速増殖炉。
Q:アメリカはどちらを選んだのか?
→A:それは、プルトニウム高速増殖炉。
Q:アメリカにおいていかなる論議がなされたのか?
→A:1970年代に入って「公聴会」が持たれた、始めはトリウム熔融塩炉の方が良いとされたがやがてGE(ジェネラルエレクトリック社)やWH(ウエスチングハウス社)が「トリウム熔融塩炉では儲からない」と証言したのをきっかけとして産業界はカーター大統領の意向を無視してプルトニウム高速増殖炉の方が良いと決定。
Q:誰がこの決定を具体化したのか?
→A:レーガン大統領。
Q:日本はどうだったのか?
→A:アメリカを模倣、
Q:その中心人物は誰か?
→A:中曽根康弘氏 彼は日本独自のトリウムサイクル路線誕生の芽を摘み取りレーガンと組んで日本のプルトニウム至上主義路線を確立した。
日本がトリウムサイクルかプルトニウムサイクルかという分岐点で政治の舵をプルトニウムサイクルの方へと切ったのは中曽根康弘氏(元首相)であることは既に良く知られています。
この本の中で最も評価出来る記述はP208〜P209で・・・・
ちなみに中曽根と熔融塩炉をめぐって、原子力関係者で語られている一つのエピソードがある。熔融塩炉の実験を成功させたオークリッジ国立研究所所長のワインバーグが、中曽根に 「日本で熔融塩炉の開発を進めるべきだ」 という旨の親書を送った。しかし、中曽根からは、なしのつぶてであった。日本の政界の事情を考えるならば、おそらく中曽根の眼に触れる前に秘書の段階で止められた可能性は高い。だが、アメリカの大統領であれば、その種の親書に返事を送るのは常識である。そう考えるワインバーグは 「こんな礼を失した政治家は見たことがない」 と怒ったと伝えられている。
多胡氏は、トリウム信奉者ではなく、トリウムサイクルの欠点やその欠点克服の困難性も挙げています。オール電化はクリーンという刷り込みがされ、「電気をもっと使う」生活が組み込まれ、電化の最たるところがトイレの進化にも表れているように、この生活から抜け出すのは至難です。
原子力は安全、クリーンだと宣伝され、その背後にあるプルトニウムの認識は欠けていました。 中曽根氏の時点で、原子力の平和利用だとして目をプルトニウムの万が一の危険系から目をそらすことを意図されていたのだろうと思われます。原子力発電に一極集中するのでなく、例えばトリウムにも研究開発の手が及んでいれば以後30年近くの研究時間を積み重ねたことになるので、別の発電系統も動き出していたかもしれない、原発に慎重になったかもしれないということです。
また、原発を完全に廃止しても現在休止中の天然ガス発電所を全部動かせば十分に足りると工学博士の勝田忠弘氏は説明し、下記の点を指摘する。
・再処理工場が完成して動いても処理能力が小さすぎるので全国の原発分に対応する事は出来ない。
・プルトニウムは原子爆弾の材料にもなる、核兵器を持たない国で再処理を認められているのは日本だけ。
・再処理工場は失敗続きでかかった費用は2兆円を超えているので、ストップできなくなった。
・再処理が出来ない使用済み核燃料は各原発の敷地内にプールで水につけて溜めている。
・原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す作業は外国(フランス、イギリス)に頼んできた。将来的には電力業界が六ヶ所村に作った再処理工場で行なう方針になっている。
加えて、原子炉級プルトニウムでも高性能の核兵器を作ることは可能で、MOX製品からプルトニウムを分離することはわずか1〜3週間で転換が可能 と述べておられます。
参考HP:
●プルトニウム原発
http://www.asyura2.com/11/genpatu8/msg/146.html
●科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&A
http://d.hatena.ne.jp/ukiukineko/20110407/p2
http://d.hatena.ne.jp/ukiukineko/20110329/p1
●2012年3月9日08時04分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120308-OYT1T01249.htm
●私の視点 勝田忠弘 朝日新聞2008/8/27
http://www.gns.ne.jp/eng/g-ken/igiari/obj_376.htm
●京都大学原子炉実験所 ウクライナ、チェルノブイリ事故への取り組みについて
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Nas95-J.html